5人に1人は帝王切開で出産!!帝王切開ってどんな手術?

日本では5人に1人の方が帝王切開で出産をされていますが、ご自身の希望では選ぶことが難しい出産方法です。

どんな出産にも不安や痛みが伴いますが、唯一手術として扱われる帝王切開について少しでもご自身もご家族も理解して出産に臨めると良いと思います。

『帝王切開とはどのような手術を行うのでしょう?』

【麻酔の方法】

下半身だけに効き術中に意識のある『局部麻酔』(脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔)』と、全身に効き術中に意識のない『全身麻酔』があります。

一般的には効果が早く現れ母体にも赤ちゃんにも負担の少ない『脊髄くも膜下麻酔』を行いますが、緊急の場合はより『全身麻酔』になることがあります。

『硬膜外麻酔』は無痛分娩でも使用され硬膜外腔にカテーテルを通し、その中へ麻酔の量を調整して入れることができ、長時間使うことができるので無痛分娩から帝王切開に変更の時や長時間におよぶ手術の時に使われることがあります。また最近では脊髄くも膜下麻酔と併用して使い術後の痛み止め投与にも使われることがあります。

【切開方法】

おへその下を水平に切るのが『横切開』で、傷痕が目立ちにくく希望する妊婦さんが増えています。

おへその下を垂直に切るのが『縦切開』で、緊急帝王切開の場合は母体や赤ちゃんの安全が最優先のため縦切開になることが多いようです。また追加の手術を行う場合も縦切開になります。

縫合方法

子宮には抜糸の必要がない溶ける糸を使って縫い合わせます。病院によっては、癒着防止材を使いその後の癒着を防ぎます。

最近では皮膚の縫合方法としても溶ける糸を使うことが主流になってきています。より傷痕も綺麗に治りやすく、抜糸がないことも産後の負担が軽減されます。

以前からの方法であるステープラー(医療用のホチキスのようなもの)で縫合することもあります。早く縫合することができますが退院時にホチキスを抜かなければいけないのと、痛みを伴うことがあります。

『帝王切開を受けるリスクは?』

5人に1人が受けている安全な手術とはいえ、やはりリスクはあります。

・ベッドに横になっている時間が長いので『肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)』のリスクが普通分娩に比べて高くなります。

最近では経過が良ければ翌日から体を動かしたり、『弾性ストッキング』を利用することで血栓を防いでいる施設が多いです。

・子宮の回復に時間がかかり普通分娩では1ヵ月程なのに対し、帝王切開では2~3ヵ月と長くかかることが多いです。

・初乳をあげられるまでに時間、日数がかかる。初乳は産後2日目頃まで出ます。助産師さんに介助してもらい、授乳ができることもあります。痛みで動けない時は搾乳してあげることもできます。

・次回妊娠時に普通分娩より前置胎盤、子宮破裂の可能性が高くなります。このリスクから次回以降の出産方法が帝王切開になることがあります。

・産後傷口が痛い!! 普通分娩は、徐々に痛みが増していき分娩をする直前が痛みのピークなので産後の痛みは数時間で軽減することが多いですが、帝王切開の場合は麻酔が切れた時から傷の痛みに耐えなくてはいけなくなります。体を動かすこと、話すこと、起き上がること、歩くことなど、きっと陣痛に耐えた普通分娩と変わらないくらい痛いと思います。普通分娩でも帝王切開でも痛み止めを処方して貰えますので無理なく赤ちゃんのお世話をしてあげて下さいね。

『最後に』

帝王切開は手術です。

ご自身が帝王切開にして欲しいと思っても、医師が快諾しないのはそれだけのリスクもあるからです。

私自身、健診時に帝王切開になる可能性を医師から話され、いろいろ調べていた時に「帝王切開の方がお産が楽」「保険が使えるからいい」「陣痛に耐えていないから愛情が減る」などの心無い言葉を目にすることがありました。

どんな出産方法でも母親は命懸けで出産をしていますし、どんなに安産でも痛いし不安もあると思います。決して楽な方法はなく1人1人頑張って出産をされています。

今年は新型コロナウイルスの影響もあり立ち会い出産が叶わないご夫婦も多いのではないでしょうか。

少しでも出産に対する不安を減らすため、出産前に『帝王切開になった場合にどのような麻酔方法、切開方法、縫合方法なのか?』を、確認しておくと万が一緊急帝王切開になっても不安や後悔が少なくなると思います。

生まれてくる赤ちゃんとの出産は一度きりです。素敵な出産を迎えて下さいね。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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