帝王切開にかかる時間は?  知っておきたい前日準備から産後の回復までの流れ

帝王切開とは、おなかと子宮を切開して赤ちゃんを取り出す分娩方法です。日本の帝王切開の割合は約20%なので、赤ちゃんの5人に1人が帝王切開でお母さんと対面することになります。経膣分娩で産むと決めていても、妊娠やお産の経過によっては誰でも帝王切開になる可能性があります。万が一の時に慌てないためにも妊婦さんやご家族は帝王切開がどんな手術なのか知っておきたいところです。今回は帝王切開の前日準備から産後の回復までの流れをご説明いたします。また麻酔の効果が続く時間や手術後の痛みや傷の回復までにかかる時間などについてもご紹介いたします。

<帝王切開にかかる時間は>

まずは経膣分娩と帝王切開それぞれにかかる時間を比較してみましょう。出産というと経膣分娩を想像する方が多く、出産には時間がかかるイメージがあるかもしれません。経膣分娩では、個人差があるものの陣痛開始から赤ちゃんの誕生まで初産婦で12~16時間経産婦でも5~8時間かかるといわれています。一方で、帝王切開の手術時間は処置内容にもよりますが1時間程度で終わることが多いようです。経膣分娩の場合は陣痛開始から誕生までの時間を出産時間とするため大きな時間差があるようにみえますが、子宮口が全開になってから赤ちゃんが誕生するまでの時間のみで考えてみると初産婦で2~3時間、経産婦では30分~1時間半程です。また帝王切開の場合、手術時間と別に麻酔をかけるのに必要な時間もあります。個人差や体感の違いもあり、どちらが長い・短いとは一概にはいえないようです。

<帝王切開の流れ>

では、帝王切開の流れについてご説明いたします。まずは前日準備です。事前に帝王切開で出産することが決まっている予定帝王切開では手術の前日に入院となることが多いでしょう。入院後はNST(ノンストレステスト)などによる赤ちゃんの健康チェックと手術の説明が行われます。シャワーや排泄は通常通りですが手術部位の剃毛があります。また、前日の夜から飲食の制限が始まる場合があります。病院によっては胃腸に負担のかからない術前食が用意される場合もあります。手術当日も飲食できないことがあるので前日の夕食はしっかりと食べておきましょう。予定帝王切開の場合、前日の行動制限はほとんどないので翌日の手術に備えて自由にリラックスして過ごしましょう。

 次に帝王切開の手術当日の流れです。起床後、NSTなど赤ちゃんの健康チェックと検温や血圧測定などお母さんの健康チェックが行われます。続いて手術の準備に入ります。準備の内容やタイミングは病院によって異なることもありますが、浣腸をしたり弾性ストッキングを履いたり点滴や尿管カテーテルを入れたりします。(点滴や尿管カテーテルは手術室で挿入する場合もあります。)そして手術室へ移動となります。術後は体を自由に動かせなくなるので貴重品の管理はこの時に済ませておきましょう。

手術室ではまず血圧計や心電図モニターが装着され、麻酔の注入が行われます。麻酔は予定帝王切開の場合は局所麻酔(脊椎麻酔または硬膜外麻酔)が使われます。麻酔の種類によって準備の時間や麻酔が持続する時間が異なります。脊椎麻酔では背中に針を刺して薬を注射で注入します。麻酔の効果が現れるまでの時間は麻酔薬を注入してからすぐに効果があり、麻酔の持続時間は2~3時間程度です。術後3~5時間もすれば麻酔は切れて感覚が戻ります。一方、硬膜外麻酔では背骨にある硬膜外腔という場所に直径1mmぐらいの細くて柔らかい管を入れそこから薬を注入します。硬膜外の管を入れる処置にかかる目安時間が5~10分程度、硬膜外の管から薬を注入し鎮痛効果が現れるまでにかかる時間が15~30分程度です。脊椎麻酔との違いは手術中も薬を持続的に注入できることです。どちらの麻酔も局所麻酔なので意識はあります。そのため、麻酔注入後に麻酔が効いているかの確認が行われます。手術室に入室してから麻酔の処置までに要する時間が30分~1時間程度です。緊急帝王切開の場合は帝王切開分娩を安全に早く終わらせるために全身麻酔となることもあります。

 そしていよいよ帝王切開の出産に入ります。おなかを切開してから赤ちゃんが取り出されるまでの時間はわずか数分です。赤ちゃんの出産時にも意識があるので赤ちゃんの産声を聞いたり、実際に赤ちゃんを見たり、生まれたての赤ちゃんと一緒に写真を撮ったりすることもできます。その後胎盤が取り出され、糸や医療用ステープラー(ホッチキスのような器具)で切開部を縫合します。帝王切開の手術時間はおよそ1時間といわれていますが、処置内容や他の手術とあわせて行う場合など状況によって手術の流れやかかる時間は前後します。予定帝王切開、緊急帝王切開、既往帝王切開(2回目以上の帝王切開)、いずれの場合も手術の所要時間はそのときの状況によって異なります。今後の避妊のために卵管結紮などの手術を同時に行う場合さらに時間がかかります。

<手術後の回復>

 帝王切開の手術後、経過が良ければ医師の判断で飲水が許可されます(早いところでは術後2時間、遅いところでは翌日)。食事はほとんどの病院で翌日から開始されます。重湯など消化の良い術後食から始まる場合もありますが、すぐに普通食になります。赤ちゃんへの授乳は早ければ当日から始まります。尿管カテーテルは翌日まで挿入したままになりトイレには行けません。点滴が抜けるタイミングは病院によって様々です。おなかの傷口は、麻酔が切れると痛み出します。痛みが強い術後は坐薬を使用し痛みを軽減させます。痛みが続く場合は痛み止めの薬が処方されます。硬膜外麻酔で手術を受けた場合、麻酔の管が背中に入ったままになっているのでそこから痛み止めを注入することが出来ます。帝王切開の傷口の痛みは個人差はありますが、術後から3日目頃までがピークで、退院する頃には治まってくる場合が多いです。傷口自体は3日程でふさがりますが、その後も傷口の下では炎症が続いており約1カ月の間新しい細胞が傷を埋めていきます。傷口が赤く盛り上がり(ケロイド化)かゆみが出てくることもあります。約1年かけて目立たない肌色に近づいていきます。傷口を溶ける糸で縫合していない場合は、術後5~8日後頃に抜糸や縫合した医療ステープラーの針を外します。抜糸するまでシャワーは禁止の場合もありますが、術後の経過が良く歩けるようになったら傷口に防水シートをつけた状態でのシャワーが許可されることもあります。

 帝王切開の入院日数は7日~10日で、経膣分娩に比べて1~3日入院日数が長くなります。入院期間中に体調を見ながらおっぱいマッサージの方法、おむつの替え方、授乳の仕方、抱き方、沐浴の方法、ミルクが必要な場合は調乳方法などを勉強していきます。退院前日には退院診察があります。お母さんの体は手術から4~8週間程で回復します。

<まとめ>

いかがでしたか?帝王切開にかかる時間や手術の流れについてイメージが湧きましたか?帝王切開の手術に不安を感じる方も多いと思います。しかし赤ちゃんが無事に生まれてくるために必要な場合があります。大切な赤ちゃんが産まれてくることを想像してみてください。きっと勇気が湧いてくるはずです。不安を乗り越えた先には赤ちゃんとの素晴らしい対面が待っています!皆様どうぞよい出産をお迎えください。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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