<切迫早産とは>
妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産といいます。切迫早産とは早産になる危険性が高いと考えられる状態、つまり早産の一歩手前の状態のことをいいます。
具体的には子宮収縮(おなかの張りや痛み)が起こり、子宮口(子宮の出口)が開きかけているところでかろうじて赤ちゃんがおなかの中にとどまっている状態のことです。出血や破水を伴うこともあります。
妊娠中は胎児を子宮内で育てられるように子宮下部の子宮頸管は閉じています。出産時には陣痛とともに開いていき、赤ちゃんが通る「産道」の一部としての役割を担っています。この子宮頸管はお産が近くなると少しずつ短くなり開いていきます。切迫早産とは、まだ早産の時期にそうした変化が始まってしまうことをいいます。
<切迫早産の原因とは>
切迫早産の原因として最も多いのは子宮内感染で、8割を占めています。腟から子宮内へ侵入した細菌によって炎症が起こると、破水や子宮収縮が起こりやすくなり、切迫早産を引き起こします。特に妊娠30週未満に起こる切迫早産の原因として多く見られます。自分では気づきにくいので、定期的に妊婦健診を受けましょう。
子宮頸管無力症という子宮収縮がなくても子宮口が開いてしまい破水しやすくなる病気も切迫早産の原因となります。子宮頸管無力症は体質や子宮頸部の手術既往などが関係しています。こちらも自覚症状がないため、健診をきちんと受けることが大切です。初回の妊娠で診断を受けた経験のある経産婦さんは、妊娠12週ごろを目安に子宮頸管縫縮術といって、頸管(子宮の出口)を縛る手術をすることもあります。また、子宮筋腫や子宮の形の異常などがあると切迫早産のリスクが高くなります。
さらに双子などの多胎妊娠、高齢出産、ストレス、痩せすぎ、妊娠中の喫煙なども切迫早産の原因となることがあります。
<切迫早産の症状とは>
切迫早産の主な症状は、下腹部の張り、生理痛のような下腹部や腰の痛みです。このような症状がある場合には、まず横になって安静にしてみましょう。休んでいて治まるようなら、あまり心配はいりません。安静にしていても規則的にあるいは頻繁に張りや痛みが続く場合には、すぐにかかりつけの産院に相談してください。
また、赤い性器出血がある時、破水したかもしれないという時、下腹部の張りや痛みがずっと続いている時にもすぐに産院に連絡しましょう。
<切迫早産の治療とは>
赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる期間が短くなればなるほど、生存率や予後に悪影響を及ぼします。切迫早産になった場合、出来る限りおなかの中で成長できる期間を延ばすことが大切です。
切迫早産の治療は第一に安静にすることで、状況に応じて投薬を行ないます。子宮収縮の程度が軽く、子宮口があまり開いていない場合は自宅で安静にし、外来通院による治療が行われますが、子宮収縮が強く認められ子宮口の開大が進んでいるような重症の場合は入院が必要となります。安静を保ちつつ子宮収縮を抑える子宮収縮抑制薬(はり止め)などによる処置を行ないます。
切迫早産の原因の一つでもある細菌による感染が疑われる場合や破水した場合には、赤ちゃんに細菌が感染するのを防ぐために抗菌薬を使用することもあります。妊娠34週より前に破水した場合は、赤ちゃんが自分で呼吸できる状態になるまで抗菌薬を投与し感染を抑えることが一般的ですが、妊娠34週以降であれば、赤ちゃんは自分で呼吸できる可能性が高いので、赤ちゃんに細菌が感染する前に出産し、生まれた後に治療を行います。
切迫早産の症状が重く早産が避けられないと判断した場合は、新生児集中治療室(NICU)がある専門の設備が整った病院へ救急搬送されることもあります。
また、子宮頸管無力症ではどんどん子宮口が開き、流産や早産になる可能性があるので、状況により子宮頸管縫縮術を行うことがあります。
<切迫早産を予防するには>
切迫早産の予防のためには、日頃から無理のない妊娠生活を心がけることが最も大切です。なるべくストレスを溜めず疲れた時にはしっかりと休憩をとりましょう。
また、感染症に気をつけましょう。精液の中には細菌がふくまれているので妊娠中の性行為の際にはコンドームなどを使用し、性感染症を予防するようにしましょう。
切迫早産の起こる仕組みはまだ不明な点も多く、子宮頸管無力症のように予防ができない場合もあります。現在では、早産予測のために、妊娠中期に経膣エコーで子宮頸管長(子宮の出口の長さ)を測定することが多くなりました。妊婦健診をきちんと受けるようにし、切迫早産の状態で早期発見して、早産にならないよう対処していきましょう。
<まとめ>
切迫早産とは、おなかの張りや痛み、出血、子宮口の開大、破水などが起こり正期産よりも早い段階で赤ちゃんが出てきてしまいそうな「早産になりかけている」状態のことをいいます。切迫早産と診断された場合、安静にして赤ちゃんができるだけ長くおなかの中で成長できるようにすることが大切です。しっかりと安静にしていれば元気な赤ちゃんを生むことが出来ます。妊娠中は日頃から無理のない生活を心がけておきましょう。
この記事の監修者

坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー