高齢出産のメリットについて考えましょう。

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

高齢出産は、20代の妊娠・出産に比べ、さまざまなリスクがあるといわれています。この点がよくクローズアップされますね。しかし、高齢出産では、さまざまなリスクを回避するために、より慎重に、より考慮やケアが行き届いた発想をもって、妊娠生活や出産を考えることも可能かと思います。
この点は高齢出産のメリットの一つとして捉えることが出来るのではないでしょうか。より具体的に考えていきたいと思います。

高齢出産のメリット①

~豊かな人生経験と経済力、長生きの傾向も~

より豊かな人生経験を重ねていらっしゃった上での妊娠・出産です。
精神的な豊かさが妊娠生活や出産を支えてくれるはずです。また、社会人経験が豊富ですと、経済的な余裕も大きいこともあり、より選択肢や自由度のある妊娠・出産・育児生活が可能かと思います。
また、海外の研究では、高齢出産した女性は長生きする傾向があり、子宮体がんのリスクが低下するということが科学的に立証されているそうです。

高齢出産のメリット②

~より慎重な行動や視点で妊娠・出産を考える~

・体の変化、サインを感じ取る

高齢出産では、一般的に安定期と呼ばれる妊娠16週を過ぎても、より慎重になっている分、体の変化やサインを感じ取ることができるかもしれません。
特に、切迫早産のサインである「おなかの張りや痛み」「出血」「胎動が急に減った」などの異変に気がついたら、すぐに受診することが必要です。あれ何だか変だな、と思われたら、迷わずすぐに受診することが赤ちゃんとママを守ることに繋がるかと思います。

・妊婦健診で現状を把握

高齢妊娠の場合は、合併症が起こりやすいといわれています。妊娠初期から出産直前まで、健診できちんと状態を把握することが、何より必要になってきます。
心配なこと、不安なことも、母子健康手帳にメモをしておき、健診当日に医師や助産師さんに相談しましょう。

・食生活をより大切に考える

妊娠中に大事な栄養素は、タンパク質、カルシウム、鉄分、葉酸などですが、特に妊娠中にたっぷりとりたい栄養素は、カルシウム、鉄分、葉酸といわれています。
カルシウムは、赤ちゃんの体を作るために、1日650mgの摂取が必要です。乳製品、豆製品、小魚、緑黄色野菜に含まれています。
また鉄分は赤ちゃんとママの血液中の赤血球をつくる大事な成分です。妊娠中は、血液の量が増えるため、貧血防止としても大切で、1日9~16mgが目安となります。レバー、牛肉、小松菜などに含まれ、ビタミンCと合わせて食べることで吸収率も上がります。
最後に葉酸については、妊娠のごく初期、胎児の脳脊髄の発達に欠かせない栄養素といわれています。ビタミンB群に属し、細胞分裂にも必要なものです。葉酸を摂取することで、口唇口蓋裂など、赤ちゃんの病気の発症リスクを減らせることがわかっています。妊娠していない場合の倍の量1日480㎍摂取が推奨され、緑黄色野菜、果物全般、豆類に含まれます。

・無理のない家事をする

高齢妊娠、もちろん20代の妊娠でも、妊娠生活では、つわりや腰痛、おなかの張りなど、さまざまなトラブルを抱え、掃除や炊事がつらくなることも多くなります。
こんな時は無理せず、自分ひとりで抱え込まないことがよりママのケアを考えることになります。
具体的には、外食に行く(もちろん栄養バランスを考えて注文します♪)、中食や宅配を利用する、休日はパパに料理や掃除を任せる等が考えられます。
出産後も、体を休めることが何より大切になりますので、妊婦さんの時からサポート体制をお考えいただくのはいかがでしょう。私の夫も子育て生活を機に、台所に立ってくれています。(手前味噌ですが、何とも有り難いことです!)

・体力作りを心掛ける

有酸素運動は、酸素をたくさん体内に取り入れることができます。特に軽いウォーキングがお勧めです。
体調が良い日にリラックスしながら、お散歩はいかがでしょうか。より体のケアが行き届いた妊娠期、出産の日を迎えるために、適度な運動も役に立つと思います。
また、産後の育児が始まった時のことを考える上でも、育児はとにかく体力が必要ですので、体力作りが重要になってきます。

さいごに

高齢出産のメリット、どのようにお考えいただけましたでしょうか?
最後にもう一つ、出産を経験した私の体験から、ママの体の負担を極力減らすことが高齢出産を何よりサポートするのではないでしょうか。
いろいろなサポートが考えられますが、2021年6月に新設された「男性版産休」も今後は有効なサポート体制になるかと思いますので、簡単にご紹介します。
この改正育児・介護休業法では、子供が生まれた直後に父親に限って通常の育休とは別に取得できる「男性版産休」が新設されました。子供が生後8週になるまでの期間に、最大4週間の休みを取得できるようになり、2回に分けて休むことも可能です。また、申請期限や取得条件も従来の制度より緩和されています。(施行2022年10月想定)
妊娠中、夫婦でパパの仕事についても緻密に計画をしておけば、このような制度を利用して赤ちゃんとの新生活をスタートできます。(パパさんよろしくお願いします)
高齢出産は、人生の経験が豊かなみなさんにとって、先々のことを細かに、より深い視点で、計画をもって進められる素晴らしい機会だと思います。
どうぞ良い出産の時をお迎えください。スタッフ一同応援しています。

◆参考

松峯寿美『やさしく知る 産前・産後ケア』高橋書店
中山攝子『35歳からの妊娠・出産』講談社
大葉ナナコ『メンズのための安産バイブル』主婦の友社
宋美玄『これでいいのだ! 妊娠・出産』ポプラ社

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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