分娩とは?種類や所要時間など初産婦さんの疑問を徹底解説

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「はじめての妊娠を経験し、分娩について知りたくなった」「分娩にはどんな種類があるのだろう」と思っていませんか。

分娩とは、赤ちゃんがお母さんの子宮から出て産道を通って、生まれてくることです。

ただし帝王切開のように、産道を通らない分娩方法もあるのです。

この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。

 

・分娩の種類

・分娩の所要時間

・分娩の流れ

・分娩にかかる費用

・分娩時のリスク

 

この記事を読むと、分娩時の流れをイメージできるようになります。

そもそも分娩とは?

分娩(ぶんべん)とは、胎児が母体から完全に娩出されて妊娠を終了することをいいます。

分娩は「お産」や「出産」と同じような意味で使われる言葉で、英語では”Birth”と表現されます。

胎児の出てくる場所による分娩方法2種類

分娩にはいくつかの種類がありますが、まず胎児が出てくる場所の違いで2種類に分けてご紹介します。

1:経腟分娩

「産道」(子宮の下部から膣、そして外陰部まで胎児が通る部分をいう)を通って赤ちゃんが出てくる分娩方法です。

経腟分娩の中でも、自然に陣痛をまつ「自然分娩」と、陣痛促進剤などを使って陣痛を誘発する「計画分娩」などがあります。

経腟分娩は痛みを伴い、体力が必要となるため、妊娠の経過や持病によっては、医師の判断で帝王切開となることもあります。

2:帝王切開 

手術でおなかを切開して、子宮から赤ちゃんを直接取り出す方法です。

希望で行われることはほとんどなく、経腟分娩では、母体や胎児に危険が及ぶと判断された場合に行われます。

妊婦健診の段階で決定し、計画的に行われる「予定帝王切開」妊娠中や分娩時の緊急事態に行われる「緊急帝王切開」の2種類があります。

姿勢の違いによる分娩4種類

次に姿勢の違いよる4つの分娩の種類についてご紹介します。

分娩の種類 

姿勢 

普通分娩 

仰向けの状態 

座位分娩 

座った状態 

フリースタイル分娩 

四つん這いや、立て膝など 

水中分娩 

専用の浴槽に浸かった状態 

1:普通分娩

病院や産院などの分娩室で、一般的な分娩台に寝た状態でする出産です。

足は開いた状態で、手はレバーを握って陣痛の波に合わせていきむ分娩方法です。

2:座位分娩

特別な分娩台を使用し、座った状態で出産する方法です。

自然に力が入りやすく、赤ちゃんが産道を通りやすいスタイルといわれています。

3:フリースタイル分娩

自身が痛みや負担が少ないと感じる姿勢で産む方法です。

四つん這いや、立て膝をしてパートナーの首に掴まるなど、いきみやすい方法を自由に取ることができます。

助産院や自宅出産では多く取り入れられます。

4:水中分娩

36~37℃ほどの体温に近い温水につかるため、リラックスした状態で出産できます。

対応している施設や機関は限定されています。

場所の違いによる分娩方法2種類

またどこで産むのか、分娩場所の違いを2つご紹介します。

1:自宅出産

自宅に助産師をまねき、家族に見守ってもらいながらリラックスした状態で出産する方法です。

妊娠の経過に問題がない場合のみ可能で、助産師と提携する医療機関との入念な準備が必要です。

2:LDR出産

陣痛(Labor)、分娩(Delivery)、分娩後の回復(Recovery)の流れを1つの部屋で行う方法です。

陣痛室から分娩室への移動をしないため、母体に負担の少ないスタイルといえるでしょう。

そのほかの分娩方法2種類

 

様々な分娩スタイルをご紹介しましたが、最後に投薬を行う分娩方法について2つご紹介します。

1:無痛・和痛分娩

陣痛を緩和するための麻酔を使用した分娩方法です。おもに心臓疾患のある人や、痛みに強い恐怖心を持つ人方に効果的な出産方法です。

体質や既往症に配慮が必要なため、医師との相談が必要となります。

2:誘発分娩

出産予定日を大幅に過ぎた場合や、前期破水が起こったにもかかわらず陣痛が起こらない場合、感染症が認められる場合などに、医師の判断で行われる方法です。

陣痛がなかったり弱かったりして、母体と胎児に危険があると判断された場合に適用されます。

希望の分娩方法は、病院や産院の分娩予約時に、自宅出産の場合は助産師さんの手配をする際に伝えましょう。

ただし、病院や助産師によっては対応できない分娩方法もあるため、あらかじめ確認が必要です。

また、母体や胎児にリスクが伴うと判断された場合も、希望どおりの分娩ができるとは限りません。

経腟分娩と帝王切開の流れ

日本でおもに行われている出産方法の「経腟分娩」「帝王切開」のそれぞれの流れをご紹介します。

・経腟分娩(自然分娩)は出産全体の約77%、帝王切開は約16%(※1)

出典:(※1)令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況|厚生労働省

経腟分娩の流れ

経腟分娩は、分娩の進み具合によって「分娩第一期~第三期」に分けられます。

「分娩第一期」は、子宮口が全開大になるまでの時期です。

陣痛が来て段々と間隔が短くなり、痛みも大きくなるにつれて、子宮口が徐々に開いていきます。

初めは生理痛のような痛みから始まり、陣痛が強くなると腰やお尻に痛みが出てきます。

分娩第一期をぬけるまでに要する時間は初産婦で「約13時間」です(※2)。

子宮口が全開大になると、「分娩第二期」に入ります。

赤ちゃんが産道を通るため会陰やお尻への圧迫感が強くなり、お母さんは陣痛が来るタイミングでいきみます。

分娩第二期の所要時間は、初産婦で2~3時間ほどです(※3)。

赤ちゃんが産まれると、いよいよ最後の「分娩第三期」です。

ここでは後陣痛と呼ばれる、軽い子宮収縮があり、赤ちゃんが生まれてから約1〜30分後に胎盤が娩出され、ようやく出産が終了となります(※4)。

出典:(※2)出産に際して知っておきたいこと | 国立成育医療研究センター

      (※3、4)出産の経過と過ごし方|西宮市ホームページ 

帝王切開の流れ

帝王切開には「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」の2種類があるとお話しましたが、ここでは陣痛が始まる前に計画して行う「予定帝王切開」の流れを説明します。

「予定帝王切開」は、1人目の時も帝王切開だった経産婦や、妊娠中から逆子や多胎妊娠、母子どちらかの健康状態に影響するなどあらかじめ帝王切開が決まっていることをいいます。

予定帝王切開の大まかな流れは、以下のとおりです。

時期 

詳細 

手術2週間前 

  • 血液検査 
  • 心電図 
  • 胸部X線など受診 

手術前日 

  • 胎児の状態確認 
  • 剃毛 

 ※入院要 

手術6時間前 

食事を済ませる 

手術2時間前 

水分補給を済ませる 

手術当日 

麻酔後、手術開始 

出典:パパも知識を持って出産を迎えよう|NPO法人ファザーリング・ジャパン

手術当日は点滴や尿道カテーテルの挿入を行い、麻酔をします。

麻酔の方法は背中から行う脊椎麻酔が主流で、麻酔が効いているかを十分に確認したのちに手術開始が開始。

切開は恥骨上部のパンティラインに沿って「10㎝ほど」の傷となることがほとんどで、手術の所要時間は「30~60分」です(※5)。

脊椎麻酔の場合はお母さんも意識があるので、赤ちゃんの状態が良ければその場でお顔を見たり抱っこができる病院もありますよ。

出典:(※5)パパも知識を持って出産を迎えよう|NPO法人ファザーリング・ジャパン

【目安】経腟分娩と帝王切開にかかる時間

 

分娩の所要時間は、分娩種類・初産婦か経産婦かなど、さまざまな要因によって異なりますが、ここでは初産婦である場合の分娩時間を紹介します。 

ただし分娩の所要時間は目安で、人によって・その時の分娩状況によって大きく異なります。

経腟分娩と帝王切開の所要時間は、以下のとおりです。

経腟分娩 

12~16時間 

帝王切開 

30~60 

出典:出産の経過と過ごし方|西宮市ホームページ

目安経腟分娩と帝王切開にかかる費用 

それぞれの分娩にかかる費用の目安は、以下のとおりです。

経腟分娩

約48万円

帝王切開

約50万円

出典:出産費用の見える化等について|厚生労働省(令和5年9月7日公表)

  出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について|厚生労働省

分娩にかかる費用は、すべてが自己負担となるわけではありません。

健康保険に加入していれば、出産一時金として「50万円」を受け取れます(※6)。

入院料や分娩料、入院中の食費などを含めたトータルの分娩費用から、50万円を差し引いた部分が自己負担となります。

また働いている場合には、勤務先の健康保険から「出産手当金」も支給される場合があるので、確認しておきましょう。

出典:(※6)出産育児一時金の支給額・支払方法について|厚生労働省

分娩における母体と胎児へのリスクとは?

どのような分娩方法であっても、母体と胎児それぞれに出産のリスクがあります。

母体のリスク

母体にかかるリスクは3種類あります。

・出血多量

・子宮内感染

・羊水塞栓

それぞれくわしく解説していきます。

リスク1:出血多量

経腟分娩では800ml以上、帝王切開では2000ml以上で出血多量といわれています(※7)。

子宮収縮不良による弛緩出血や、頸管裂傷、癒着胎盤、子宮破裂など、分娩時の出血にはさまざまな原因があります。

出血多量の場合、必要に応じて輸血を行ったり、子宮そのものを摘出したりするケースもあるのです

出典:(※7)早産期の出血性ショックに関する検討(令和3年9月)|J-STAGE

リスク2:子宮内感染

水をしてから長時間陣痛がこずに時間が経過してしまうと、子宮内に細菌が入ってしまい子宮内感染を起こすリスクが高まります。

感染を起こすと炎症が起き、母体にも胎児にも影響がでるため、促進剤を使用して分娩を進めたり緊急帝王切開を行うケースもあります。

リスク3:羊水塞栓

羊水が胎盤や子宮の血管から母体の血液中に入り込み、血栓が詰まったり血液が止まらなくなったり、大出血を起こすのが、羊水塞栓です。

発症する確率は3万人に1人といわれています(※8)。

出典:(※8)羊水塞栓症の関与により産後に心停止を起こした1例(2014年)|J-STAGE

胎児のリスク2種類

胎児側のリスクは主に2種類あります。

・胎児機能不全

・分娩停止

それぞれくわしくご紹介します。

リスク1:胎児機能不全

胎児の状態が悪化してしまうことをいい、多くはの酸素不足によるものです。

原因としては、おもに下記があげられます。

・常位胎盤早期剥離

・やさい帯の圧迫

・胎児発育不全

・妊娠高血圧症候群

状態が悪化する前に急速に出産するために、分娩の状況によって「鉗子分娩」「吸引分娩」「緊急帝王切開」が行われるケースもあります。

リスク2:分娩停止

分娩停止とは、陣痛があっても分娩が進まない状態が続くことをさします。

原因としては、赤ちゃんの大きさに対して産道が狭い「児頭骨盤不均衡」赤ちゃんの頭の向きが正しい方向に向いていない「回旋異常」などがあります。

陣痛促進を行ったり、母体が体勢を変えたりしても進まない場合には「吸引分娩」「鉗子分娩」「帝王切開」が行われるケースもあります。

まとめ

分娩にはいくつもの種類があり、母子共に問題が無ければ自分で選択できるものもあります。

どの分娩方法でもメリット、デメリットがあるため事前に良く調べて納得できる分娩方法を探しましょう。

一般的な経膣分娩と帝王切開についての流れや費用なども事前に良く知っておくと出産に対する不安もなくなっていくのではないでしょうか。

皆様のご出産が良いものになるよう応援しております。

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この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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