通常、帝王切開というと逆子がなおらなくて計画的にするもの、というイメージがありますよね?
実は普通分娩を予定している方でも、急に帝王切開になることがあるのです。
それって、特別なケースでしょ?私は違うはず・・・そう思われますよね?
私もそう思っていました!
でも意外とあっという間に、「切りましょう」と言われるかもしれません。
今回は、全く準備していない帝王切開になった私の体験を元に、緊急帝王切開についてお話ししたいと思います。
その時は突然やってくる。私の体験
私の出産は37歳の時。
周りの友人がひとしきり出産していたため、リアルな体験談を聞くこともしばしば。とにかくその痛みが恐ろしく、無痛分娩を希望していました。
退院後すぐに赤ちゃんのお世話ができるように、ベッドやおむつ替えの場所をセット。予定日に向けて準備は万端でした。
直前の診察でも赤ちゃんは正常。元気いっぱいです。
そしていよいよ入院。いざ陣痛促進剤を投与すると間もなく
「ピンコンピンコン」
医療ドラマでよく聞くあのアラームが鳴るではないですか!
「どういうこと??」と困惑している私に、助産師さんたちは「大丈夫ですよ~~」と言いながら酸素マスクをつけさせます。
「どうしたんですか?」と聞くと
「ちょっと赤ちゃんが苦しいみたいなの」「ゆっくり呼吸してくださいね」
でも自分は全く苦しくありません。
実感はないながらも、周囲のただならぬ様子に緊張感が高まっていきました。
有難いことに難を逃れ、赤ちゃんは正常に戻りました。
しかしその直後、先生から言われたのは「切りましょう」の一言でした。
何らかの原因で、赤ちゃんが出てこようとすると呼吸ができなくなってしまう状態にあり、通常の分娩ではリスクが高いと判断されたのです。ほんの数分前まで無痛分娩だと思っていたのに!
鉗子や吸引のリスクは勉強しましたが、帝王切開なんて全くの想定外です!!
そしてついに帝王切開。その痛みとは。
帝王切開と聞くと、「麻酔をしているから出産の感覚がない」と思われている方も多いのではないでしょうか?
実はちゃんとあるんです、出産の感覚が!
と聞くと、けっこう怖いですよね?でもそれは痛みとは違うものです。
帝王切開は赤ちゃんへのリスクがないように半身麻酔の状態で行われます。そのため妊婦さんの意識はしっかりあります。そして痛みはないですが、引っ張られる感覚はあるのです。
何も予備知識がなかった私は、
「意識があるのにお腹を切られるなんて!!」と、恐怖でガタガタ震えていました。(助産師さんがずっと手をにぎっていてくれました。感謝)
実際のところ、痛みを感じることはありませんでしたが、お腹の中をぐぐぐ~とけっこう強めに引っ張られている感覚がありました。
半身麻酔は怖かったですが、ちゃんと自分の中から産まれたのがわかってよかったです。
そして、お腹開けっ放しで赤ちゃんと対面。閉腹のため、あっという間に眠りの中へ。
生まれてから始まる戦い

帝王切開といえば、産後の痛みが大変、というのはよく聞く話かと思います。
産後は血栓ができないように足に装着された機械で一晩中加圧が繰り返されていました。そのせいで、眠りたいのに眠れない。それに加えて、私の場合は痛み止めのせいで猛烈に全身が痒くなってしまい、一晩体を掻きむしっていました。今思えば、そこが一番きつかったです。(相談したうえで、薬は中断し痒みも止まりました)
そして翌日にはもう歩くことが求められます。早く動いた方が、早く治るらしいのですが、それはもうお腹を切っていますから、動かすのが怖いのです!
「そろそろ立ち上がってトイレに行ってみましょう」と言われても・・・
やっぱり動くと痛いし、何より怖いし、そしてやっぱり痛いし・・・
結果、私の場合は翌日動けませんでした。自力でトイレに行けるようになったのは翌々日のことです。
初めは、点滴用スタンドに全体重をかけているような状態で移動していましたが、それも数日。支えなく歩けるようになります。そして痛み止めを飲んでいますから、ずっと痛みがあるわけではありません。
産後初めて許可されたシャワーは、傷がめちゃくちゃしみるのではないかとおびえ、自分のお腹の傷を直視することも怖かったのですが、意外と大丈夫でした。傷はまあまあ怖い状態でしたけど・・・。
退院。そして想定外の日々
そしていよいよ、退院の日。動きによってはズキッと痛むことはありますが、かなり痛みは軽減されていました。しかし、体を真っ直ぐ伸ばすのは痛いので、腰をやや丸めて歩いているような感じだったと思います。
帰宅後は、自分のお腹が痛むリスクを考えながらの育児が始まりました。
なるべく腹筋を使わないように、そーっと動く生活。
準備していた赤ちゃんのお世話スペースの配置は台無し。
腰をかがめるのがきつくて、赤ちゃんの沐浴は1人じゃ無理。
産後の骨盤用ベルトは傷が痛くて出番なし。
などなど、想定外のことがいろいろとありました。
特に、下着。傷に当たるので、しばらくは股上深めな優しい素材のものでないと履けません。
痛みからの解放、その後の戦い
帝王切開の痛みが、完全になくなったのは約1ヶ月後でした。
もう体をうーんと伸ばすこともできます。
しかし!このあと襲うのは「痒み」です。傷が治る時って、痒くなりますよね?あれが、けっこう人前で掻くには微妙なポジションで痒いのです。これには困りました。しかもこの痒み、治まっては痒くなり治まっては痒くなり。
なんと全く痒みがなくなるのに数年かかりました。(※かなり個人差があると思います)
ずっと痒いわけではないのですが、ふとした瞬間に痒くなるということが繰り返されます。もう一生このままなんだと腹をくくって、そのこと自体を忘れた頃、痒みはなくなっていました。そして傷口も数年かけて小さく薄く目立たなくなっていきました。
どうやら傷跡は「数年かけてゆっくり」治るようです。
まとめ
これらの話は、私の年齢や体質も関係しているお話です。
では緊急帝王切開を経験して、どうだったかというと
「いい思い出」です。
どんな出産にもドラマはつきもの。1人の人間が産まれるかけがえない時間です。
急にお腹を切ると言われて、半身麻酔で、めちゃくちゃ怖かったです。産後も痛い思いはしました。でも不思議と、赤ちゃんが元気ならOK。そう思えました。
そんな風に思えるのは、当たり前じゃない「生命」が目の前にあるからではないでしょうか。そして今では「この傷なあに?」と言われ、堂々と説明できる幸せ。
帝王切開はリスクの方が注目されますが、私にとっては誇らしい幸せな出産方法です。


この記事の監修者

坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー