無痛分娩とは?無痛分娩の流れを解説

坂田陽子

記事監修者:坂田陽子

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

<無痛分娩とは?>

出産時の痛みを「鼻の穴からスイカを出すくらい」と例えることがありますが、出産は想像を絶するような痛みを伴います。出産により引き起こされる痛みのことを総じて陣痛と呼びます。麻酔を使って陣痛の痛みを和らげながら出産する方法が無痛分娩です。無痛分娩では脊髄と呼ばれる痛みを伝える神経の近くに麻酔薬を投与し、神経をブロックして痛みを軽くします。今回はこの無痛分娩の流れを準備から出産まで詳しく解説していきます。

<無痛分娩の流れ 準備>

まずは無痛分娩の準備の流れについて見ていきましょう。

①無痛分娩について知る

無痛分娩とはどのようなものなのか、リスクはあるのか、メリットやデメリットは何か、費用はどのくらいかかるのか等、正しい情報を集め詳しく知ることが大切です。ブログで体験談を綴っている方もいるので参考にしてみても良いかもしれません。

②無痛分娩が受けられる施設を探す

日本には約2,400の分娩施設がありますが、その中で無痛分娩を行う施設は約30%しかありません。通院できる範囲に施設があるのか、里帰り先に施設があるのか、探しておく必要があります。厚生労働省は無痛分娩を行っている施設の情報を公開しています。また、2019年2月にJALA(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)がホームページを開設し、無痛分娩に関する情報提供が行われています。その1つが全国無痛分娩施設検索サイトです。このサイトでは、JALAが定めた無痛分娩に関する情報項目を公開している施設のリストが掲載されています。

③家族で相談する 

出産には家族の理解と協力が不可欠です。本当に自分に合った出産方法なのか、費用面や通院面で負担がかからないか、家族みんなで相談して決めましょう。

④病院に問い合わせをする

無痛分娩を希望することが決まったら、候補の病院に問い合わせ、詳しい説明を受けることが大切です。ほとんどの病院で、あらかじめ無痛分娩の日を決め陣痛促進剤を投与し分娩を行う計画無痛分娩を行っています。また、無痛分娩枠に制限を設けている病院もあります。いずれにしても知識と経験の十分な医師のいる施設で無痛分娩を受けることをお勧めします。

⑤病院を受診する/分娩予約をする

病院が決まったら早めに受診し、医師に無痛分娩を希望する旨を伝え、分娩予約をしましょう。無痛分娩枠がすぐに埋まってしまう病院もあり、早い人では妊娠5~6週で分娩予約をすることもあるようです。

⑥説明会に参加する

無痛分娩の出産の流れや麻酔方法は病院により異なることがあるので、病院で実施される無痛分娩説明会や無痛分娩教室にはできるだけ参加するようにしましょう。安全に無痛分娩を行うために参加が必須となる病院もあります。

⑦分娩日を決定する(計画無痛分娩の場合)

一般的に、計画分娩の予定は、妊娠37週以降の正期産の時期に入ってから医師が決めます。妊婦さん本人の希望を聞き、お母さんの体と赤ちゃんの状態を総合的に判断して、出産の準備が整う時期を予測します。緊急性がある場合は、妊婦さんの希望に関わらず、安全性を考慮した予定日に実施されます。

<無痛分娩の流れ 出産>

次に、無痛分娩の出産の流れを見ていきましょう。

計画無痛分娩の場合、予定している日の前日または当日の朝から入院します。(下記①からの流れになります。)

計画無痛分娩ではない場合、陣痛が始まったら病院に連絡をして、指示に従って入院します。(下記①事前準備と④からの流れになります。)

①事前準備

心電図、血圧計、胎児心拍数陣痛計装着など帝王切開の手術準備と同様の準備が行われます。当日の朝までにお通じがない場合には座薬投入や浣腸を行う場合があります。

②子宮口を広げる

子宮口を広げる必要がある場合には、バルーンと呼ばれる水風船のような器具を挿入します。ゴム状のしぼんだバルーンを子宮口へ入れて滅菌した水を注入し膨らませることで子宮口を広げます。この処置は前日から行う場合もあります。

③陣痛促進剤を投与する

人工的に子宮収縮を起こして陣痛を促進させるために、陣痛促進剤を点滴で投与します。効き目が弱ければ基準量の範囲内で投与量を増やしたり、陣痛促進剤の種類を変えることもあります。

④麻酔を開始する

麻酔を開始するタイミングについては、妊婦さんの希望と分娩進行を合わせながら決めていきます。無痛分娩では多くの場合、硬膜外麻酔が用いられます。硬膜外麻酔というのは背骨にある硬膜外腔という場所に直径1mm程の細くて柔らかい管を入れ、そこから薬を投与する麻酔方法です。硬膜外の管を入れる処置にかかる時間が5~10分程度、硬膜外の管から薬を注入し鎮痛効果が現れるまでにかかる時間が20~30分程度です。背中に針を刺して薬を注射で投与する脊椎麻酔を併用する場合もあります(脊髄くも膜下硬膜外併用鎮痛)。この場合、まず脊髄くも膜下腔に薬を投与し、その直後に硬膜外腔に管を入れます。硬膜外麻酔のみで行う鎮痛法に比べて効果が早く現れ、数分後にはある程度の鎮痛効果が感じられます。

計画無痛分娩の場合には状況に応じて②~④の流れが前後することがあります。

⑤分娩が進むのを待つ

ここからは分娩が進むのをひたすら待ちます。出産までの時間は自然分娩と変わりません。初産婦で12~16時間程度、経産婦でも5~8時間程度かかります。

⑥麻酔を注入する

子宮口が4~5㎝開き、陣痛が強まってつらくなってきたら硬膜外の管に麻酔薬を注入して痛みを和らげます。麻酔が完全に切れる前に痛くなってきたなと思ったら薬を追加してもらった方が良いそうです。赤ちゃんが大きい場合や、赤ちゃんの頭の向きがずれている場合には、麻酔薬を追加しないこともあります。麻酔薬が赤ちゃんを押し出す力を弱めてしまう可能性があるためです。

⑦助産師さんの合図に合わせていきむ

麻酔が効いていると痛みの感覚がないので、いきむタイミングが難しいそうです。おなかの張りと助産師さんの合図を頼りにいきんでみましょう。

⑧出産

待ちに待った出産の瞬間です。痛みはなくても赤ちゃんが出た瞬間がわかったという方もいます。赤ちゃんが誕生した時の感動は自然分娩と変わりません!!すぐに赤ちゃんを抱くこともできます。

⑨産後

出産後2時間程で麻酔が切れます。無痛分娩は分娩時の精神的な疲労感が少ない分、産後の回復が早いと言われています。

<まとめ>

無痛分娩の流れ、何となくつかめたでしょうか?無痛分娩の流れは施設ごとに異なる場合があります。妊婦さんや赤ちゃんの状態によっても異なる場合がありますので、今回ご紹介した流れはおおまかな例として参考にしていただけたら、と思います。みなさんが幸せな出産を迎えられますように。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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