知っておきたい無痛分娩の3つのデメリット

<出産はどうして痛いの?>

無痛分娩とは、麻酔を使って陣痛の痛みを和らげながら出産する分娩方法です。

陣痛はまず分娩第一期と呼ばれる子宮口が開き始めて全開になるまでの過程で発生します。お産が近づくと、赤ちゃんを外に押し出そうとして、子宮が収縮を始めます。

この収縮による痛みが陣痛です。

生理痛のような不規則な痛みに始まり、次第に強く規則的に痛むようになります。胎児が出るために少しずつ子宮口が押し広げられることでも痛みが生じます。そして子宮口が大きく開くにつれ、痛みは強くなります。

また、胎児の頭が下がってくることで骨盤も押し広げられるため、腰にも砕けそうな痛みが発生します。子宮口が十分に開くと、胎児の頭が産道である腟内に進みます。

これが分娩第二期です。

胎児の頭により産道の腟などが圧迫、刺激され脳に伝わり、痛みが生じます。この痛みは排便時の痛みと似ているため、いきみたい感覚も出てきます。その後、胎児は腟口から体外に出ますが、その際に腟口が大きく開きます。

赤ちゃんが出てくる間際には外陰部から肛門にかけて強い力で引っ張られるような、焼けるような激しい痛みを感じることが多いようです。

無痛分娩では脊髄と呼ばれる痛みを伝える神経の近くに麻酔薬を投与し、神経をブロックして痛みを軽くします。

無痛分娩の最大のメリットは、痛みを和らげることで出産への恐怖と痛みによるストレスを緩和させ、お母さんが落ち着いて出産に臨めるということです。

<無痛分娩のデメリットも知っておこう>

では、無痛分娩にはデメリットはないのでしょうか?

安全な無痛分娩をするためには、メリットだけでなくデメリットも知っておく必要があります。今回は無痛分娩で発生する合併症やトラブルなど、知っておきたい無痛分娩のデメリットについてご紹介いたします。

①分娩時のデメリット

無痛分娩のデメリットとして、分娩所要時間が長くなることが挙げられます。

また、麻酔薬の影響で陣痛が弱くなることで、分娩の進行が遅れ、陣痛促進剤を使用しなければならなくなったり、鉗子分娩や吸引分娩が必要になったりすることがあります。

陣痛促進剤で人工的に陣痛を起こすことで、子宮破裂が起きるリスクがわずかながらあるということもデメリットの1つです。

あらかじめ無痛分娩の日を決めて行う計画無痛分娩では、陣痛促進剤を投与し、分娩することになるので、このデメリットについては知っておかなければなりません。

次に麻酔の片側効き、まだら効き、効果不十分などのデメリットが挙げられます。

麻酔薬が入っているのに、どうしても一定部分の痛みだけ軽くならない場合があります。麻酔チューブを調整しても効果が不十分の時には、麻酔チューブの入れ直しが必要になることもあります。人によっては麻酔が効きにくい体質ということもあるので注意が必要です。

②胎児に対するデメリット

陣痛促進剤で人工的に陣痛を起こすことで胎児機能不全が起きる可能性があります。

また、鉗子や吸引器を使用することで母体や赤ちゃんの頭を傷つけるリスクもあるので、これも無痛分娩のデメリットといえます。

③産後のデメリット

分娩の進行が遅れることで、赤ちゃんの頭が長時間お母さんの神経を圧迫し、排尿障害や神経障害(足のしびれや感覚麻痺)のリスクが高まることもデメリットです。

分娩が進まない場合、以上のリスクを考慮し、母体や胎児の安全のために緊急帝王切開に切り替えることもあります。

<要注意!麻酔の副作用

無痛分娩のデメリットとして最も注意しなければならないことが麻酔の副作用です。

頻度が高いものに足の感覚が鈍くなることや足の力が入りにくくなることがあります。これは痛みを伝える神経と足の運動や感覚をつかさどる神経が近くにあるため、痛みの神経に麻酔が作用する際に足の神経にも麻酔が効いてしまうことで起こります。

他にも比較的頻度が高い副作用として血圧が下がる、尿意が弱くなる、尿が出しにくい、熱が出る、かゆみが出るなどがあります。またごく稀に硬膜外腔に細い管を入れるときに硬膜を傷つけ起こる頭痛、血液中の麻酔薬の濃度が高くなる局所麻酔中毒などのリスクもあります。合併症に対しては適切な処置を行います。

きわめて稀ですが、可能性がゼロではないデメリットとして、麻酔チューブの入っている経路を通じて神経に菌が感染すること、麻酔チューブの入っている場所付近にできた血液の塊や膿(うみ)のたまりが神経を圧迫して麻痺などの症状が出ること、くも膜下に麻酔薬が入り麻酔が効きすぎて呼吸困難を引き起こすことなどが挙げられます。

これらの重篤なリスクを伴う確率は交通事故に遭う確率よりも低いなどといわれていますが、無痛分娩には命の危険が伴ったり後遺症が残ったりするケースもあるということは頭に入れておきましょう。

<今後の課題と対策>

無痛分娩を望んでいたとしても、以下のような理由から諦めざるを得ない場合があります。

・無痛分娩を行う施設が少ない

・無痛分娩枠に制限を設けている施設が多く予約が取れない

・産科麻酔に理解のある専門の医師が不足している

・麻酔科医が常駐していない時間帯、人員不足の時間帯に対応できない

・分娩費用の他に無痛分娩の管理料等がかかり、分娩費用が高額になってしまう

現在、海外と比べても国内の無痛分娩普及率は低く、これらは今後、無痛分娩の需要が拡大していく中で改善しなければならない課題といえます。ただし、海外では盛んに行われていますので、今後、国内での無痛分娩へのニーズが高まり、現場の対応や費用面の改善等、体制をどれだけ整えられるかという点に注目していきたいところです。医療機関側の理解がまだ十分でない場合もありますので、環境を整えていただくことも必要となるでしょう。

また、無痛分娩を検討する妊婦さんも、メリットとデメリットをよく理解した上で、担当の医師やご家族と相談し、後悔のない分娩方法を選択しましょう。

<まとめ>

無痛分娩は、陣痛の痛みを和らげるメリットがあり、分娩に不安を感じている妊婦さんにとっては希望したい出産方法の1つです。

一方で注意しなければならないデメリットがあることも事実です。

無痛分娩を希望される場合には、事前に医師から十分な説明を受け、疑問点があればきちんと相談することが大切です。

出産は母子ともに健康に終えられることが最優先です。無痛分娩のメリットとデメリットをしっかりと理解した上で、ご家族と一緒に自分に合った分娩方法を選択しましょう。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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