はじめまして。
最初に少しだけ自己紹介をさせていただきます。
18年前に初めての妊娠をし、35時間、陣痛と格闘した挙げ句にハプニングが起こり、緊急の帝王切開となり出産をしました、高校3年生の男の子の母親です。
今回コラムを書くという機会をいただいた事をきっかけに、18年前には感じ取ることの出来なかった、私なりに受け取った、母親が体験する「陣痛」の意味について、振り返ってみたいと思います。
最初は、陣痛についての体験談を書こうとは思っていたのですが、
先日体験した出来事から得た感情が、とても不思議だったので、その事について書いてみたいと急きょ思い立ちました。
”こんな事もあるんだなぁ~”位の気楽な気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。
出産に共通する不安「陣痛の痛み」
さて、
臨月を迎える妊婦さんは、最初は「もうすぐ赤ちゃんに会えるんだ!」と、ワクワクドキドキの感情でいっぱいになり、幸せに包まれた様な気持ちになると思います。
辛い妊婦生活ももうすぐ終わり!と、今までお腹の中の赤ちゃんの為に頑張ってきた自分を、褒めてあげたい様な気持ちにもなるかもしれませんね♫
しかし一方で、陣痛が怖くて怖くて不安になってしまう…という方もいるのかなぁと思います。
本にもネットにも、〝腰をバットで殴られていたような痛み‘’とか〝生理痛の10倍くらいの痛み‘’とか、それはそれは恐怖をあおるような言葉が並びます。
しかも、陣痛の長さって人によって全然違いますし、いざその時になってみないとわからないなんて聞くと、ネガティブな気持ちになって当然なんですよね。
完璧な説明書があって、その通りにすれば痛みも少なく、短時間で安全な安産を迎えられる‼︎というのであればいいのですが、100人いれば100通りのお産があるといわれるように、なかなか母親の希望通りにはいかない事がほとんどです。
私自身も35時間、拷問のような猛烈な痛みに耐えたものの、最後の最後で赤ちゃんにへその緒がからまってしまい、緊急の帝王切開で息子を出産しました。
最初は突然の破水から始まり、丸一日以上も陣痛が続き、何度も何度も病院と家を往復し、最後は総合病院に搬送されての手術でした。
とても安定した妊婦生活を過ごしていただけに、まさかまさかの難産でした…。
人によって経験するお産の形は様々ですが、どんな出産にも共通しているものは「陣痛の痛み」ですよね。
とても個人差があるけれども、安産であっても難産であっても陣痛の痛みは必ずみんなが経験するもの。
壮絶な出産体験は自分を信じる力に
しかし、どうして陣痛ってあんなに痛くて苦しいんでしょうね。
もちろん赤ちゃんがお腹から出てくるという物理的な理由もあるのでしょうが、
それ以外で、お母さんと赤ちゃんにとって何か大きな意味があるんじゃないかな~と今振り返ってみると思うのです。
お産の解説本には‘’陣痛は赤ちゃんに会う為の幸せの痛み‘’なんてある書いてあるのをよく目にしますが、いざその時になってみると、そんな言葉を思い出し余韻に浸る余裕なんて無いものです。
とにかく必死で痛みと闘い、心配をして何度も「大丈夫?」と聞いてくる旦那に向かって、「うるさい!いいから黙ってて!」なんて悪態をついてみたり。笑
最初に思い描いていた理想の出産とは程遠く、100%満足のいく出産を迎えられた、という方はとても少ないのではないかと思います。
そして出産が終わり子育てに追われ、あっという間に年月が過ぎ、やがて子供が思春期を迎えます。
この頃には陣痛の記憶や、出産の感動などもすっかり薄れてしまって、日常生活で思い出す事はほとんど無くなってしまいます。
思春期の子供は親の言うことはもちろん聞かず、家族と決めたはずのルールも無視。注意をすれば「うるせー」「うざい」と話を最後まで聞かない。
学校の事や友達の話を聞いてみても、返事は面倒くさそうに「楽しいよ」のみ…。
とりあえず返事をしておいて、その場を収めたいという雰囲気がヒシヒシと伝わってきます。親と会話をする事さえも面倒に感じているのでしょうね。
こうなると、我が子なのに本当に何を考えているのか全くわからず、母親としての自信も失っていきます。
子供との距離を感じてしまう。
私ってダメな母親だな…と感じて、子供と向き合う事が辛く感じる事もありました。
心を落ち着けたくて、押し入れにしまってあった昔のアルバムをひさびさに引っ張り出しました。
産まれたばかりの我が子を抱き、疲れきった笑顔で幸せそうに笑う自分と我が子の写真を見ながら
「あぁ、あの頃はかわいかったなぁー」
なんて干渉にふけっていたら、ある感情が突然湧き出してきたのです。
〝私が産んだ子なんだから大丈夫!”
〝あの壮絶な体験を2人で乗り越えたんだから、私達ならきっと大丈夫なんだ!”
本当に不思議と、そんな風に思えたのです。
そして改めて壮絶な出産体験を思い出した時、
”私はダメな母親なんかじゃない。
産んだだけで、それだけで偉いんだ!”
と、今にも消えそうだった自分を信じる力が、ムクムクと復活していくのがわかりました。
‘’大丈夫!私達は大丈夫‼︎”
産道から出てくる時、実は赤ちゃんもとってもとっても苦しいそうなんです。
それでも赤ちゃんが頑張れるのはお母さんも頑張っているから。
早く会いたい!という気持ちはお母さんも赤ちゃんも一緒なんですね。
お互い顔も合わせていないうちから心が通じ合っているなんて、とっても神秘的で感動的です!!
‘’母と子は困難を乗り越えた同志”
まさにそのように言えるのではないでしょうか。
陣痛、出産で結ばれる、母子の絆
一時お互いの事が信じられなくなったり、憎たらしく思えたりする時期が来るかもしれない。
でも母と子は、陣痛、そして出産という壮絶な体験を乗り越えたという強い絆で結ばれていて、
それは一生消えない特別なものです。
どんな困難も、きっとまた一緒に乗り越えていけるのだと思います。
「陣痛」を通して、
私は‘’自分を信じる力‘’、‘’自分を肯定する力‘’、そして‘’我が子を信じる力‘’をもらったような気がします。
18年前、苦しみの中
「なんで陣痛ってこんなに痛いのー!!」
と疑問に思っていた答えが、18年後に返ってくるのですから、”出産て本当に不思議だなぁ”と思うのです。
この記事の監修者

坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー