妊娠中に帰省や仕事の都合、出産前の旅行などで飛行機に乗っても良いのかな?と思うことがあるかもしれません。
母体や赤ちゃんへの影響が心配になる方も多いのではないでしょうか。
リスクや気をつける点を確認してみましょう。
妊婦は飛行機に乗っても大丈夫?
妊娠中に飛行機に乗ってはいけないという決まりはありません。
比較的リスクが少ないとされている時期は妊娠16週~27週の妊娠中期になります。
妊娠が安定し、流産のリスクも減るためです。
各航空会社では搭乗する時期によってガイドラインを設けていますので、必ずウェブサイトで最新情報をチェックしておきましょう。
妊婦が飛行機に乗るリスクと対処法
妊娠中の飛行機利用はいくつかリスクが考えられます。
①エコノミー症候群
長時間同じ姿勢で座ることで血流が悪くなり、肺血栓を引き起こす病気です。妊娠中は血液が固まりやすい上、機内が乾燥しているため、体の水分が蒸発しやすい環境にあります。水分が不足すると血栓症が起きやすくなります。
対処法・・・
・機内で軽いストレッチ運動(30分に1回程度)
例えば、つま先を上下に動かす、足首を回す、おなかを圧迫しないよう、ふくらはぎを軽くマッサージなど。
・水分をこまめに摂る(カフェインや炭酸飲料は×)
・ゆったりとした服を着る
・着圧ソックスを履いておく
②気圧の変化
基本的にはあまり心配はいりませんが、上空での気圧の変化の影響を受けて、吐き気や腹痛が誘発されることもあります。
対処法・・・
・ゆったりとした服装
・通路側やトイレの近くの席を確保する
・マスクの着用(感染予防にもなります)
赤ちゃんへの影響は?
妊婦が飛行機に乗ると赤ちゃんへの影響があるのではないかと心配な方もおられると思います。搭乗前の手荷物検査で行われる金属探知機やボディスキャナーで、流産や奇形といった悪影響はありません。X線検査での放射線量は微量ですので、胎児に影響はないとされています。心配な場合は職員の方に相談してみましょう。
また、上空は地上に比べ放射線量が高くなっていますが、体に影響を及ぼすほどのものではありません。例えば、東京からニューヨークまでの飛行で浴びる放射線量は約0.19ミリシーベルトです。毎日浴びている自然放射線量は年間2.4ミリシーベルトといわれていますので、飛行機に乗ることでの被爆の心配はありません。
飛行機に乗ることで、流産や胎児の奇形の可能性を心配する方もいるかもしれませんが、そういった報告はありません。流産率でいえば、客室乗務員の流産率はその他の職業の女性と大差ないという結果から、あまり心配ないと考えられています。
妊婦が飛行機に乗る場合、赤ちゃんよりも母体の急な体調変化が心配です。母体が体調不良になれば、胎児に影響が及ぶ場合もあります。飛行機に乗る前は体調を整え、少しでも異変を感じたら中止しましょう。
飛行機に乗る前にできること
トラブルを回避するため、事前に準備を整えておくことが大切です。
・かかりつけの医師に相談
妊娠中は予期せぬ事態が起きることもあります。出来るだけ早めに医師に相談し、妊娠の経過や体調を考慮して慎重に決めましょう。
目的地や帰省先の産婦人科も調べておくことをお勧めします。
・移動は妊娠中期に
妊娠初期や後期はリスクが高く、各航空会社の規定もあります。また、妊娠中期であっても安心だと断言することはできません。リスクをよく考慮した上で、おなかが張る、出血があるなどの症状が見られる時は中止しましょう。
里帰り出産は、できれば32週頃、お仕事のある妊婦さんでも産休に入る34週頃には里帰りをした方が良いでしょう。
・移動しやすい席を予約
通路側やトイレの近くなど、気軽に動ける席を確保しましょう。
・マスクの着用
飛行機の中は空気がとても乾燥していますし、臭いで気分が悪くなることもあります。感染症予防の観点からもマスクを着用すると良いでしょう。
・ゆったりとした服装
エコノミークラス症候群や体調不良を避けるため、胸やおなか周り、足などを締めつけることのないゆったりとした服装を心掛けましょう。スリッパなどに履き替えるのも良いでしょう。また、冷え対策もお忘れなく!
・母子手帳、保険証、緊急連絡先の持参
機内で体調が悪くなってしまった時のために必ず携帯し、すぐに取り出せる場所に用意しておきましょう。おなかが目立たない場合は、マタニティマークなどのタグを見えるところにつけておくと良いでしょう。
まとめ
妊婦さんでも、注意点を守れば飛行機に乗ることができます。事前準備をしっかり整え、トラブルを回避することが大切です。
各航空会社では妊婦さん向けのサービスを用意しているところも多いので、航空チケットの手配時や空港で搭乗する航空会社のサポートデスクに妊婦であることを伝えましょう。
優先搭乗や航空会社によっては国際線を一人で利用する妊婦さんにエアポートサポートというアテンドサービス(荷物のお手伝いなど)が用意されているので、事前に申し込んでおくと心強いですね。
この記事の監修者

坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー