生まれたばかりの赤ちゃんは、とても小さくてまだ繊細。ママもパパも、始めは恐る恐るお世話をすることでしょう。
そんな新生児期でも、大泣きする赤ちゃんのエネルギーには驚かされます。赤ちゃんがエネルギッシュなのは素晴らしいことなのですが、あまりに泣き止まないと心配になりますよね。特に夜は、不安も膨らみがちです。赤ちゃんは全力で泣けば、そのうちスヤスヤ眠りますが、これが続くとママとパパは心身ともにクタクタ・・・なんてことも。
一体どういう睡眠リズムになっているの?
これが夜泣き?
ここでは、そんな疑問や対処法について、お話しします。
新生児は昼夜逆転?!
新生児期の赤ちゃんは、まだ睡眠のリズムが整っていません。そのため、寝たり起きたりを細かく繰り返しています。睡眠時間は一日のうち13~19時間ほどといわれていますが、続けて眠るわけではなく2~3時間ほど眠ればまた起きます。その睡眠と睡眠の間、赤ちゃんは昼夜問わず泣くのです。
「昼夜問わず」とはいうものの、実は新生児期の赤ちゃんは夜に泣くことが多いといわれています。なぜかというと、ママのおなかの中にいるときの赤ちゃんは昼夜逆転で過ごしており、生まれたばかりの新生児期はそのリズムがまだ残っていることがあるからです。そのため、夜になると覚醒してしまい、泣き出すことが多いのではないかといわれています。
しかし、医学的にはこれを「夜泣き」とはいいません。夜泣きとは、生後4~5カ月以降の赤ちゃんが昼間は元気で機嫌よく過ごしていたのに夜中に急に泣き出す状態のことをいいます。そのため、新生児期の赤ちゃんが夜に泣くことは夜泣きとはいわず「たそがれ泣き」といいます。たそがれ時ではなく夜中に泣いても、たそがれ泣きです。
いずれにしても、夜に泣かれるのはつらいもの。でも、多くの赤ちゃんは生後3~4カ月頃になれば睡眠リズムが整ってくるといわれています。それまでの睡眠は、赤ちゃん自身の自然なリズムに任せるのが良いでしょう。朝にお日さまの光を浴び、夜になれば暗くなるといったおなかの外の環境に慣れていけば、自然と睡眠リズムが出来てくるでしょう。
どうして泣くの?
生後4~5カ月頃から始まる夜泣きは、はっきりとした理由がわかっていません。むしろ、理由なく泣くのが夜泣きであるともいえます。諸説ありますが、赤ちゃんは脳が発達していく段階で夢を見るようになります。その夢の影響で、急な夜泣きが始まるのではないかともいわれています。
一方、新生児期のたそがれ泣き。こちらもはっきりとした理由はわかっていませんが、赤ちゃんが何かを訴えている場合が多くあります。例えば、おなかがすいた、おむつが汚れた、ゲップが出ない、暑い、寒いなど、何か不快であることを訴えている場合です。
昼でも夜でもたそがれ時でも共通して、新生児期の赤ちゃんが泣く理由はこうしたものが考えられるでしょう。赤ちゃんが泣いたとき、まずは抱っこで安心させるのが一番です。
次に、ミルクや授乳でおなかを満たしてあげて、おむつも汚れていないかをチェック。そして、お部屋の温度と着せているものが合っているかもチェックしてみましょう。「肌着を1枚脱がせてみたらスーッと眠り始めた」なんてことも、よくあります。
受診サインがなければ、肩の力を抜いてみる
理由があっても無くても泣くのが赤ちゃん。そうはわかっていても、ママやパパは赤ちゃんが泣くたびにハラハラしながら対処し、心配もしますよね。さらには、ママやパパが起きている昼間に赤ちゃんが泣くのと、ママやパパが疲れて眠い夜に赤ちゃんが泣くのでは、負担も違ってくるでしょう。
特に、赤ちゃんの脳が発達して夜泣きが始まる時期にはママの体も回復期に入っていますが、赤ちゃんが新生児期だとママもまだ産褥期。そんな中でのたそがれ泣きは、心身ともに負担が大きいかもしれません。
オムツも替えた、ミルクもあげた、汗もかいていないし、一体どうして?と万策尽きて途方に暮れることもあるかと思います。そんな時は、万が一のために新生児の受診サインをチェックしてみましょう。
・新生児の受診サイン
①38℃以上の熱がある
②ぐったりしている
③下痢やおう吐がある
④顔色が青白い/突然青白くなる
上記の症状があった場合は、かかりつけ医や小児救急電話相談《#8000》へ相談してみることをお勧めします。受診のサインに当てはまらなかった場合、何をしても泣き止まないということは、泣くだけの元気はあるということですから、少し視点を変えて肩の力を抜いてみても良いでしょう。
ぜひ試してみてほしいのは、赤ちゃんから少し離れてみることです。大人が近くにいたら、赤ちゃんの抱っこをお願いして、ママは少し離れてみましょう。きっと、思っていたよりも赤ちゃんの泣き声は小さく、そこまでの切迫感は感じられないでしょう。ママは一番近くで赤ちゃんの泣き声を聞いています。
誰よりも泣き声が大きく聞こえていますから、誰よりも焦りや不安を感じ、時には自分を責めたりするかもしれません。でも、それだけ近くで赤ちゃんを守り育てている自分を責める必要は全くありません。少し抱っこを代わってもらい「やれやれ、今日も元気に育っているな」と、お茶でも飲んでみると良いでしょう。
赤ちゃんと二人きりの夜を過ごしている場合でも、ベッドの周りに危険なものが無いかを確認して赤ちゃんの全身が見える状態であれば、5分ほど赤ちゃんから離れても問題ないでしょう。離れたところから赤ちゃんの顔を見つつ、少し座ってリラックスしてみてください。海外では、夜泣きに対してこの方法が多く取り入れられています。(海外の多くの国では、夜泣き=たそがれ泣きのことをさします)
まとめ
この世に生まれたばかりの赤ちゃん。睡眠リズムが整うまでは昼夜問わず泣きますが、それは正常な発達段階です。赤ちゃんが泣いたら、まずは抱っこ。そして不快なことを取り除いてあげましょう。それでも泣き止まなかった場合でも、受診が必要な症状は無いかを確認したら、ママも一息つきましょう。
もちろん家族の協力は必要不可欠。抱っこを交代で行うなど、パパや周りの家族と一緒に子育てをスタートさせるきっかけになると良いですね。一人で頑張りすぎず、抱え込まず。ママのリラックスを赤ちゃんにも伝えるつもりで、たそがれ泣きを乗り切りましょう。
この記事の監修者

坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー