世界の出産事情 無痛分娩の割合は? 日本の無痛分娩の割合が低い理由

<欧米では主流!?無痛分娩>

日本ではまだあまり普及していない無痛分娩ですが、出産に占めるその割合は2008年の2.6%(厚生労働省研究班)から2016年は5.3%(日本産婦人科医会)と2倍に増加しており、無痛分娩という出産方法が少しずつ認知されてきています。

芸能人の釈由美子さんや東尾理子さんも無痛分娩を経験され、その体験談をブログに綴っています。2018年には英国のキャサリン妃が無痛分娩で出産し、産後7時間で退院したことで無痛分娩は産後の回復が早いのではないかと注目を浴びました。欧米では既に無痛分娩が主流となっている国も少なくありません。

厚生労働省の調査によれば無痛分娩の割合は日本が出産全体の5.3%(2014年-2016年)であるのに対し、フランスでは65.4%(2016年)、アメリカでは41.3%(2008年)と高い割合になっています。加えて欧米では帝王切開の割合も高いので(例えばアメリカでは32.3%)麻酔を使用して痛みを和らげる出産は出産全体の7割以上にも上ります。

日本産科麻酔学会のホームページの「無痛分娩Q&A」には日本と海外の無痛分娩の割合が掲載されています。

これによればアメリカ61.0%、カナダ57.8%、フランス82.2%、イギリス60%、ベルギー68%、スウェーデン66.1%、フィンランド89%と北米やヨーロッパでは無痛分娩が一般的に行われていることがわかります。しかし欧米でも無痛分娩の割合は国により状況が異なり、イタリア20%、ドイツ20-30%、ギリシャ20%と比較的無痛分娩の割合が低い国もあります。

一方、アジアは全体的には無痛分娩の割合が低い地域ですが、イスラエル60%、シンガポール50%、韓国40%と無痛分娩が一般的に行われている国もあります。中国(10%)や日本(6.1%)は世界的に見ても経腟分娩に対する無痛分娩の割合が低いといえます。しかし中国は帝王切開による出産の割合が60%以上と圧倒的に高く麻酔を使用しての出産の割合は欧米と同様7割にも及びます。

<欧米で無痛分娩の割合が高くなっている理由>

アメリカやフランスで無痛分娩の割合が高くなっている背景には、産後の入院期間の短さがあります。

欧米の多くの国では出産費用が社会保障によってまかなわれているため、産後の入院期間が日本に比べてとても短いのです。英国のキャサリン妃のように出産の当日や出産の翌日に退院することも少なくないそうです。

そのため、自然分娩よりも母体にかかる痛みやストレスが少なく産後の母体の回復スピードの速い無痛分娩が主流になっているのです。

また、欧米では大規模な分娩施設に専門の麻酔科医がいて、産科医、助産師、麻酔科医がチーム医療を行っており広く無痛分娩が行われています。このように安全に無痛分娩ができる環境が整っていることも無痛分娩の割合が高くなっている理由です。

<なぜ日本では無痛分娩の割合が低いの?>

一方、日本では1施設当たりの分娩数が少ないために無痛分娩を担当する麻酔科医を常時配置することが困難であり、そのことが無痛分娩の割合が低い理由の1つだと言われています。

そしてこれは医療事故のリスクにも繋がっています。麻酔科医のいない小規模な分娩施設では産婦人科医が無痛分娩を担当します。しかし安全で質の高い無痛分娩を提供するためには産科麻酔に理解のある麻酔科医の関与が不可欠です。専門の医師の不足によりリスクが生じた場合の対応が遅れてしまうことが懸念されています。2017年4月に厚生労働省からも「緊急時に対応できるよう十分な医療体制を整えるよう求める」緊急提言が出されました。無痛分娩は専門性が高いため、緊急対応ができる施設で行うことが好ましいとされています。

また、無痛分娩の割合が低い理由に施設や費用面の問題も挙げられます。厚生労働省の情報によれば無痛分娩を行う施設は全国に360施設あり、その割合は分娩を取り扱う施設全体の約30%です。無痛分娩を希望していても近くに施設がない、予約が取れないなどの理由から無痛分娩を選択できないことがあります。

また、費用面においても無痛分娩は通常の分娩費用の他に無痛分娩の管理料や麻酔料等がかかることもあり、施設によっては分娩費用が高額になってしまうこともあります。2017年に行われた日本産婦人科学会による分娩に関する調査の中でも無痛分娩を取り巻く現状を改善させる必要性が明記されています。

さらに、日本の無痛分娩の割合が低い理由に「忍耐を美学とする国民性」が挙げられます。「痛みに耐えてこそ出産」、「痛みを伴わない出産では赤ちゃんに愛情が湧かない」、「無痛分娩なんて甘えている」等の考え方が日本の無痛分娩の割合の低さに影響を及ぼしているようです。

妊婦さん自身は無痛分娩を希望しているのに周囲の圧力や無理解から無痛分娩に踏み切れなかった妊婦さんもいらっしゃるようです。出産時の痛みの有無と母子間の愛情には医学的根拠などありません。

むしろ無痛分娩を経験された方の中には「痛みを抑えることでストレスが軽減され落ち着いて出産することができ、出産直後に穏やかな気持ちで愛情を感じながら我が子を抱くことが出来て良かった」という感想をお持ちの方もいらっしゃいます。

<無痛分娩という選択肢>

無痛分娩とは麻酔で分娩時の痛みを和らげ出産に対する恐怖心やストレスを軽減させる出産方法です。欧米では無痛分娩が主流になっていますが、日本では施設や専門の医師の不足から出産に占める割合はまだまだ低いのが現状です。

しかし、その割合は年々増加傾向にあり、少しずつ注目を集めています。また実際に経験した方の7割近くが無痛分娩に満足しているというデータもあり、今後も希望する方が増えていくことが予想されます。麻酔を使用する出産なのでリスクがないとは言い切れません。

無痛分娩を希望される方は正しい情報を得て判断されることが大切です。

ライフスタイルが多様化する現代において、出産方法も自由に選択できるようになると良いと思います。全ての妊婦さんがご自分の望む出産を迎えられるようになることを願っています。そして、無痛分娩が安全に普及することに期待したいと思います。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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