「無痛分娩」ほんとうに痛くないの?

無痛分娩は、本当に「無痛」なのか?

無痛分娩を決めた人も、無痛分娩にしようか迷っている人も、一番気になることですよね。

ネットでいろいろ調べてもこんな声を目にすると不安になります。

「無痛のつもりで臨んだのに、麻酔が全然効かなくて、めちゃくちゃ痛くて全然無痛分娩じゃなかったです。これなら最初から自然分娩にしておくんだった・・・」

無痛分娩なのに痛いことあるの!?

子供は欲しいけど、痛いのは怖い!!

そもそもなんなの、その個人差は!!!

今回は、そんな不安な気持ちを解消するべく、無痛分娩の「痛み」についてお話していきたいと思います。

無痛分娩は本当に無痛なのか?

四の五の言わずに答えを言うと「痛みはゼロではない」と言えます。

ゼロじゃないのに、無痛って・・・詐欺じゃないか!?とすら思えますが、そこは痛い時もあれば痛くない時もあるため、嘘ではないのです。

人によって?

それって私も含まれるの??

そこが気になりますね。

まずは痛みに大きく影響する麻酔についてご説明していきます。

<無痛分娩の麻酔とは>

現在の無痛分娩で使用される代表的な麻酔は、「硬膜外麻酔」です。

硬膜外麻酔とは、背骨の奥にある硬膜外腔にカテーテルを入れて麻酔を行う方法です。

カテーテルとは医療用の柔らかいチューブみたいなものですね。

そんなのを背中に入れるなんて、痛い??

大丈夫です。カテーテルを入れる箇所に麻酔をしてから入れていきますので、最初にチクッとするだけ。予防接種くらいの痛さです。

でも硬膜外腔はとてもデリケートな箇所ですから、ちょっとずれると大変なことに。

そのため硬膜外麻酔は専門の麻酔科医がやることの多い麻酔なのです。

その他にも点滴麻酔がありますが、弱い麻酔になりますので、現在は硬膜外麻酔が中心です。

※点滴麻酔を使っている産院もありますので、要確認です!硬膜外麻酔じゃないとかなり痛いと思いますよ!

<無痛分娩の流れ・・・痛いときはくるのか?>

無痛分娩では通常、計画分娩になることが多く、経過をみて予定した日にちに入院します。

自然なタイミングを待っていると、麻酔科医の不在などで無痛分娩の処置ができない可能性があるためです。

そして計画分娩では陣痛を誘発する「陣痛促進剤」を使うケースが多いです。

入院後、まずは陣痛促進剤を入れて、陣痛を起こします。

その後に麻酔を入れて、分娩台へと上がり出産、という流れです。

さて本題の「痛み」ですが、上の説明で、お気づきになりましたか?

「陣痛を起こしてから麻酔」なのです。

陣痛=痛い、わけですから「痛みはある」ということになります。

じゃあ、無痛分娩にしても意味がない?

いいえ、そんなことはありません!

<無痛分娩にして良かった!心から思う瞬間>

ここでもうひとつの無痛分娩を終えた方の声をご紹介します。

「麻酔をしたら、すーっと痛みがなくなって、感覚はあるけど痛みはありませんでした。むしろ、いきむタイミングがわからなくて困りました。」

陣痛の痛みに耐えていたら、麻酔を入れた途端に痛みがなくなったということがわかります。

実は、麻酔を早くからしてしまうと陣痛が弱まり、出産が進まないことがあるため、すぐには麻酔をしない病院が多いのです。

そのため陣痛はしばらく我慢することになります。

痛い思いをしたと言う人がいるのは、陣痛を経験しているから、でもあるのです。

どのくらいの時間、陣痛に耐えるのか。

大抵は子宮口5cm程度に開くまでのようですが、これは病院や先生によっても方針が異なり、おひとりおひとりの進み具合にもよるため、時間がどのくらいかは予想が難しいところです。

陣痛は一定の間隔で起こり、出産が近付くほど間隔が短くなっていきます。

一般的に初産婦さんは時間がかかり、長い方では陣痛から出産まで1日がかりの方もいらっしゃいます。

加えて初産となれば、初めて経験する痛みなわけですから、それはそれは痛いでしょうし、長い時間だと感じるはずです。

病院によって麻酔を入れていくタイミングは違います。

多少リスクはありますが、早くから入れてくれるところもあるようです。

麻酔はどのくらいのタイミングでするのか、よく病院に確認して、心の準備をしておくといいですね。

<痛みはどんどん強くなる! 痛みVS麻酔>

子宮口が全開となり、ついに赤ちゃんが産まれるときが、最も痛い場面です。

ここでは麻酔がしっかり効いてくれないと困りますよね。

実は、痛みの強さに合わせて麻酔の量は調節するものなのです。

しかし「いきむ」ためには、運動機能が麻痺するほどの麻酔はかけられません。

痛みはとるのに力が入るようにするなんて、なんて難しい麻酔なのでしょうか。

最近では無痛分娩のニーズ増加に伴い、熱心に訓練された産科医の方が麻酔をされるケースが増えています。しかし痛みの経過を見ながら麻酔の量をコントロールするには、専門の方がいて、人員が整っていることも重要です。

病院を選ぶ際は、常駐の麻酔科医(できれば産科専門の麻酔科医)がいるところを選ぶと安心ですね。

<他にもある。痛みいろいろ>

陣痛促進剤を入れて陣痛を起こしていきますが、なかなか子宮口が開かない場合、バルーンを使い、子宮口を広げることもあります。

それが痛かったという声も耳にします。

また、麻酔により陣痛が弱く出産が進まないケースがあります。時間が長くなると赤ちゃんが危険な状態になりかねません。そんな時は、麻酔を増やすことができなくなる場合もあります。

麻酔の量を減らすか、麻酔を中止することで、赤ちゃんを早く安全に出すことが優先されるのです。

そして麻酔科医が間に合わないケースもあります!

これだけは避けたい!!

常駐の麻酔医がいたとしても、夜間まで勤務しているとは限りません。陣痛が始まってから出産するまでの時間は一人一人異なります。

そのため、経産婦さんなど陣痛から出産までが早い方の場合、麻酔科医が到着する前に産まれてしまうということも考えられます。

逆に初産の方は、計画分娩にしていたとしても、出産までに時間がかかることが多いため、夜間になった場合などのことをお医者さんに確認しておくことが大切です。

<まとめ>

痛みの程度は人それぞれ

陣痛の時間も人それぞれ

病院によって方針も違います

「無痛分娩」というフレーズから「痛みがない(ゼロ)」と思い込み、心構えがないまま自然分娩のような痛みに直面する方もおられます。

大事な出産だからこそ、母体も赤ちゃんもなるべく負担なく、心も体も準備しておきたいですね。

そのためには、産院を決める前によく確認しておくこと。そして、様々なケースについて、よく先生に相談して、説明してもらうことが大切だと思います。 これからお世話になる先生にうるさく細かく聞くことは躊躇されるかもしれません。しかし、生まれてくる我が子のため、ご自身の大事な出産で悔いを残さないためにも、次でいいやと先延ばしすることはやめましょう。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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