2021年10月24日
高齢出産

高齢出産は帝王切開が安心?

高齢出産とは

高齢出産とは、35歳以上で子供を出産することです。日本産婦人科学会では35歳以上の初産婦を高齢初産と定義し、一般的にはこの高齢初産のことを高齢出産といいます。
以前は30歳以上の初産婦を高齢出産と定義していましたが、30歳以上の初産婦が増えたことに加え、WHOをはじめとする諸外国でも同様の定義がなされているため、35歳に引き上げられました。
厚生労働省の統計によれば2019年の出生数に占める母親が35歳以上(初産以外も含む)の割合は約29%でした。10年前の約24%、20年前の約12%と比較すると、高齢出産が増加傾向にあることがわかります。
高齢出産増加の背景には女性の高学歴化とそれに伴う社会進出に加え、近年の生殖補助医療の発達が高齢女性の妊娠率を上昇させていることがあります。

高齢出産に伴う5つのリスク

①卵子数
女性の卵子数は年齢変化によって減少していきます。日本産婦人科学会によると、思春期から生殖適齢期には30~50万個の卵子が37歳くらいまでに2万個に減少するそうです。また、女性の妊娠しやすさは、おおよそ32歳位までは緩やかに下降しますが、卵子数の減少と同じくして37歳を過ぎると急激に下降していくようです。

②流産率
高齢出産の場合、母体や赤ちゃんへのリスクが高くなり、妊娠初期に起きる流産の多くは受精卵の染色体異常が原因と報告されています。
高齢妊娠では染色体の異常が起きやすくなるため、母親の年齢が高いほど流産の危険性も高くなります。34歳以下の妊娠の流産率が10%以下なのに対し、35歳~39歳では13.1%、40~44歳では24.1%、45~49歳では36.6%となっています。

③赤ちゃんに関わる疾患の出現率
赤ちゃんにさまざまな先天的な障害や病気が起きやすくなるというのも高齢出産のリスクの1つです。
母体の年齢と先天異常の出現率は比例するという事実もあり、高齢出産に伴って増える先天異常にはダウン症、心室中隔欠損症などの心奇形、内反足、先天性横隔膜ヘルニアなどがあります。

④母子に関わる疾患の発症率
妊娠中の疾患である妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病も母体の年齢が高くなるにつれて発症するリスクが高まります。妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧がみられる場合、または高血圧にたんぱく尿を伴う場合につけられる診断で、たんぱく尿がある場合は妊娠高血圧腎症ともいわれます。

また、早産、上位胎盤剥離、けいれん(子癇)、視覚障害、脳出血、肝臓・腎臓障害、心不全などを引き起こしたり、胎児の発育障害や胎盤機能不全、胎内死亡などを起こすこともあります。
妊娠糖尿病は妊娠中に血糖値が高くなる疾患で、流早産、妊娠高血圧症候群、羊水過多症、巨大児に基づく難産を引き起こします。32週以降の子宮内胎児死亡のリスクも高まり、新生児の低血糖や呼吸機能の問題が生じることもあります。

⑤持病の悪化
年齢が高くなると妊娠前から持病のある方も多くなります。そのために産前、産後のトラブルが増えたり、妊娠の影響で持病が悪化したりすることもあります。
持病があることで、さまざまな産科的リスクが複合的に高まります。母子の命を守るために慎重な管理が必要になります。

高齢出産では経腟分娩と帝王切開どちらが安心?

分娩方法には、産道から赤ちゃんを出す経腟分娩、おなかを切開して赤ちゃんを取り出す帝王切開があります。
高齢出産でも年齢の他に特別な問題がなければ経腟分娩での出産が可能です。しかし、高齢の妊産婦さんは軟産道が硬く難産になりやすいといわれているため、場合によっては分娩途中で医療の助けを借りることもあります。お産は自然の営みです。特に問題がなければ経腟分娩を基本に考えます。順調に進めば、子宮に切開を加える帝王切開よりも経腟分娩の方が母体への負担は軽く済みます。
一方、帝王切開は手術です。不安だからという理由だけで行うことはできません。帝王切開でのお産は経腟分娩ではリスクが高いと判断された場合に行われるものです。高齢出産の場合、帝王切開の方が安心と思う方も少なくありませんが、必ずしもそうとは限りません。自然に任せることのリスクと手術をすることのリスクを考え、リスクがより少ない方を選ぶようにします。

経腟分娩、帝王切開それぞれに考えられるリスク

①自然に任せる経腟分娩のリスク
・おしりや足が先に出てきて頭がつかえてしまう恐れのある骨盤位
・子宮破裂を起こす恐れのある帝王切開術や子宮手術の既往歴
・分娩途中で出血が増えると母子ともに危険な状態になる低置胎盤
・筋腫のできている部位によって分娩の進行を妨げる恐れのある子宮筋腫
・分娩途中で胎位が変わったり胎児が苦しくなったりする恐れのある多胎
・母体の血圧コントロールが乱れ合併症が起きる恐れのある妊娠高血圧症候群

②帝王切開の手術をすることのリスク
・周辺臓器の損傷や癒着、腸閉塞、術後の再出血など術中・術後に合併症の起こる可能性がある
・帝王切開での出産は次回以降も帝王切開となる可能性が高い
・麻酔による影響、術後の傷の痛みと傷跡が残る
事前に経腟分娩は難しいと判断できれば、手術日時を決めて予定帝王切開が行われます。しかし、高齢出産で増えてくるのが経腟分娩でも大丈夫だけれど、通常よりはリスクが高いと予測されるケースです。この場合、施設や医師の方針、妊産婦さん自身の希望などを考え合わせながら帝王切開にするかどうかを決めます。経腟分娩にトライする場合でも、危険な兆候が見られたら緊急帝王切開に切り替えます。

まとめ

高齢出産をされる方の中には、やっと授かった赤ちゃんを出来るだけ自然な形で迎えたいと考える方も多いかと思います。帝王切開に対して抵抗感がある方もいることでしょう。一方で、帝王切開の方が安心と考えている方もいるかと思います。
お産へのこだわりは人それぞれです。高齢出産でいくつかのリスクを抱えている場合、施設や分娩方法について自分の理想を追求するのが難しいこともあります。
しかし、どんな出産であれ、大切な赤ちゃんが家族の一員になることに変わりありません。不安なことがあれば定期健診の際に医師や助産師に相談しましょう。

潜在的なリスクを抱えている高齢出産だからこそ、安全性を最優先に出産に臨んでください。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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