2021年11月30日
赤ちゃん

新生児に必要な栄養量

新生児期の栄養環境が成人期に影響を及ぼす!?

ライフステージの初期においては、胎内での栄養状態や母乳からの各種栄養素の摂取も含めた新生児期・乳児期の栄養状態、成長期における栄養状態について、特段の配慮を行う必要があります。
新生児栄養の進歩は著しく、近年では胎児・新生児期の栄養環境がその後の成人期に影響を及ぼすという新しい学説が出てきており、新生児期の栄養管理はますます重要となってきています。
新生児・乳児期には,生命の維持と生活活動に加えて、急激な成長・発達のための栄養が必要です。このため、体重1kgあたりの栄養の必要量は、ほかの年齢階級に比べて著しく高くなっています。

新生児・乳児(0~5カ月)の食事摂取基準

健康な個人及び集団を対象として、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照するエネルギー及び栄養素の摂取量の基準を示したものを食事摂取基準といいます。乳児においても食事摂取基準が目安量(一定の栄養状態を維持するのに十分な量)という形で算定されています。

新生児・乳児の食事摂取基準(1日あたり)
・推定エネルギー必要量
男性550kcal、女性500kcal

乳児及び小児のエネルギー摂取量の過不足についての評価には、成長曲線を用います。体重や身長を計測し、成長曲線のカーブに沿っているか、体重増加が見られず成長曲線から大きく外れていないか、成長曲線から大きく外れるような体重増加がないかなど、成長の経過を観察します。成長曲線は母子手帳にも記載がありますので、参考にしてみましょう。

新生児の栄養方法と栄養成分の比較

新生児は、母乳や育児用ミルクなどの乳汁から、全ての栄養を摂取しています。母乳だけの栄養で子供を育てることを母乳栄養、母乳以外の乳汁やその加工品を用いて育てることを人工栄養、母乳と人工栄養の両方を利用して育てることを混合栄養といいます。
新生児・乳児にとっては母乳栄養が最適です。人工栄養では一部の栄養素(ビオチン、ヨウ素、セレン)が食事摂取基準の目安量に満たないと推定されていますが、栄養素の欠乏・過剰などは報告されていません。0~5カ月の乳児用調製粉乳摂取量については約800ml/日、エネルギー摂取量は600kcal/日、たんぱく質摂取量は約13g/日との報告があります。これは食事摂取基準の目安量を満たす量になっています。また、母乳栄養児と人工栄養児では6カ月までの体重及び身長の増加に有意差はなかったとの報告もあります。

近年、乳児用調製粉乳のたんぱく質組成及びたんぱく質含有量を母乳に近づける改良がなされています。また、ビタミンやミネラルも母乳に近い組成となるように調整されていますが、食事摂取基準の目安量を満たすよう、母乳では不足しがちなビタミンやミネラルを強化、配合しています。

人乳(100gあたり)と育児用ミルク(100mlあたり)の成分組成

人乳  ミルクA社    B社

エネルギー(kcal)       65       70        67
たんぱく質(g)         1.1                1.6     1.6
脂質   (g)         3.5               3.5                 3.6
ビタミンA(㎍RE)         47                69                  65
ビタミンD(㎍)           0.3               52                  48
ビタミンB1 (mg)            0.01            0.04               0.04
ビタミンB2 (mg)                 0.03            0.08                0.09
ビタミンC(mg)                    5                   6                   6
ナトリウム(mg)                   15                20                  20
カリウム (mg)                  48                69                   65
カルシウム(mg)                 27                 53                  46
鉄    (mg)                0.04             0.8     0.8

新生児の消化吸収機能

新生児・乳児期は消化吸収機能が未成熟なため、栄養管理には十分な配慮が必要です。新生児の消化吸収機能について見ていきましょう。
口腔:新生児の哺乳は、先天的ないしは反射的能力によって行われます。新生児の唾液分泌は少ないですが、生後1週間もすれば増加してきます。

・胃

新生児の胃の容量は約50mlです。新生児の胃は筒状でわん曲が少なく、噴門(入り口付近)の筋肉が弱いため、授乳後に体を動かしたときなどに吐いてしまうことがあります。胃のぜん動運動はあまり活発に行われず、胃液の酸度が弱く、消化酵素の活性が低いため、たんぱく質や脂質の消化作用は少なくなっています。

炭水化物は胃においては消化されません。乳汁が胃の中に留まる時間は母乳が2~3時間、育児用粉乳は3時間前後となっています。胃内pHは母乳栄養児で4.0以上、人工栄養児では6.0以上で母乳栄養児の方が酸度は高くなっています。母乳は消化が早い、ミルクは腹持ちが良いなどといわれるのは乳汁が胃の中に留まる時間と胃内のpHが関係しているようです。

・小腸

膵液、胆汁、小腸液によって消化が活発に行われます。

・肝臓

乳児の肝臓は体重の約5%に相当する重量を持ちます。(成人は約2.5%)小腸壁から吸収されたアミノ酸やブドウ糖あるいは脂肪酸とグリセリンは門脈を経て肝臓に至ります。肝臓では貯蔵のほか、代謝産物が処理されたり解毒作用が行われたりします。

・大腸

大腸では消化液は分泌されず、水分の吸収が行われます。大腸内の細菌は生後3日目頃までは大腸菌や腸球菌がみられ、5日目ごろには乳酸菌の一種であるビフィズス菌の増殖が始まります。

母乳栄養児では腸内pHが5.5前後で、腸内菌の95%以上がビフィズス菌なのに対し、人工栄養児では腸内pHが7.0前後で腸内菌に占めるビフィズス菌の割合はわずか20~30%です。よって、便性にも違いが見られます。母乳栄養児の便は酸性で卵黄色の弱酸臭、水分が多くねっとりしているのに対し、人工栄養児の便は中性から弱酸性の淡黄色で腐敗臭のする固い便になっています。

・腎臓

血液中の老廃物がろ過され、尿が生成されます。乳児はこの腎機能においても十分発達していません。人工栄養の場合、濃いミルクを与えると排泄すべき物質が体内に貯留し、食欲不振や発熱などが生じます。特に夏場の発汗が多い時には水分不足にならないよう注意が必要です。

まとめ

新生児に必要な栄養素、新生児の栄養の消化吸収について、おわかりいただけたでしょうか。新生児期の栄養管理がその後に影響を及ぼすといわれていますが、新生児期は体の機能が未熟なため、栄養管理には多くの配慮が必要となります。大切なことは日頃から赤ちゃんの様子をよく観察し、体重の増加や食欲の状態を把握しておくことです。そして、不安なことや困ったことがあればかかりつけの小児科医、産院の看護師や助産師、地域の保健師や栄養士にすぐに相談するようにしましょう。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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