妊娠初期の出血は妊婦さんの30%が経験

妊娠初期に少量の出血を起こすことは約30%の妊婦さんが経験するといわれており、出血自体はあまりめずらしい症状ではありません。

出血は何らかの異常を知らせるサインではありますが、特に異常がない場合でも起こるもので焦る必要はありません。

しかし、まれに重大な病気を伴う出血もあるので、安易な自己判断は禁物です。出血があった場合には病院に連絡し、どのように対処するか指示を仰ぐことが重要です。

私自身、妊娠初期に出血してしまった経験があります。主人の転勤で引っ越しがあり、無理をして動いてしまった後に出血してしまいました。幸い出血は一度だけで大事には至らず、数日の安静で通常の生活に戻ることができました。流産してしまったのではないかと不安で眠れなかったのを覚えています。

出血といっても、おりものに少し血が混じったものから、ナプキンやショーツに大量に赤い血がつくもの、何日も少量の出血が続くものなど原因によって大きく違います。妊娠初期の出血の原因となる病気は様子を見て良いものから、緊急手術が必要となるものまでさまざまです。

 

妊娠初期の出血の原因

①胎盤ができあがる過程での出血

・着床出血(量:少量、色:赤~茶)

受精卵が子宮の中に着床する時に起きる出血で、妊娠による生理現象です。すべての妊娠の8~25%に見られます。出血量は少なく、2~3日で治まります。胎盤が子宮に形成される過程で、赤ちゃん側の細胞である絨毛が子宮内膜の細い血管を破って入り込み、子宮内膜の血管が傷つけられることで出血が起こるとされています。

・絨毛膜下血腫(量:少量~大量、色:赤~茶)

受精卵が子宮内膜に着床した時、子宮内膜の血管が傷つけられ、子宮を包む絨毛膜と子宮内膜の間で出血することがあります。その際にできた血の塊が絨毛膜下血腫です。少量の出血なら子宮に吸収されますが、量が多いと腟の外にまで漏れ出てくることがあります。大量の出血でも4~7日ほどで止まります。妊娠初期~中期に起こり、超音波検査によって発見されます。妊娠初期に見られる出血のほとんどを占めると考えられています。血種が吸収され、感染を起こさなければ悪影響はありませんが、出血の量によっては安静を指示されることもあります。

 

②切迫流産と早期流産

・切迫流産(量:少量~大量、色:赤)

切迫流産とは、胎児が子宮内にあって流産へ進行する可能性のある出血などの症状を伴う状態を指します。少量の出血が断続的に見られるのが特徴です。大量の出血や下腹部痛を伴うと流産のリスクが高くなります。出血が少量で強い腹痛がなく超音波検査で胎児の心拍が確認されれば、妊娠を継続できます。特別な治療法はなく、安静に過ごす経過観察になります。入院が必要となる場合もあります。

・早期流産(量:少量~大量、色:赤)

流産は妊娠22週未満に妊娠が継続できなくなることで、全妊娠の10~15%に起こります。中でも妊娠12週未満に起こるものを早期流産といい、流産の8割を占めます。妊娠12週までに起こる流産のほとんどは、胎児の染色体異常が原因です。

 

③異常出血

・異所性妊娠(量:少量~大量、色:赤)

受精卵が子宮内膜以外の卵管、卵膜、腹膜などに着床してしまった妊娠のことを異所性妊娠といいます。全妊娠の1~2%の頻度で発症し、以前は子宮外妊娠と呼ばれていました。

少量の赤い出血が続き、徐々に出血量が増えて腹痛を伴うようになります。妊娠検査薬で妊娠陽性の判定は出ますが、超音波検査で子宮の中に赤ちゃんがいないことから異所性妊娠が判明します。胎児が成長できる環境ではないので、妊娠の継続は不可能です。

お母さんの命に関わる可能性がある病気なので、妊娠検査薬で妊娠を確認したら、早めに産婦人科を受診し、超音波検査で胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が子宮の中にあるかどうかを確認してもらいましょう。

・胞状奇胎(量:少量もしくはおりものに混じる程度、色:褐色~赤)

胎盤をつくる絨毛組織が異常増殖を起こし、粒のような状態になって子宮を満たしている状態です。胎児はその中に吸収されてしまいます。手術で子宮内の絨毛を取り除く処置をする必要があり、妊娠の継続はできません。超音波検査で診断されますが、自覚症状として、断続的な出血や褐色のおりものがあったり、つわりがひどかったりします。

・前置胎盤(量:少量~大量、色:赤~ピンク)

胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、子宮の出口(内子宮口)の一部または全部を覆っている状態を前置胎盤といいます。超音波検査で発見されることがほとんどで、無症状の場合が多いですが、痛みが無いのに急に出血してくる場合もあります。少量の出血が数回起こることが多いですが、1回目の出血がいきなり大出血の場合もあります。前置胎盤になると帝王切開での分娩となります。

 

④妊娠とは無関係の出血

・子宮腟部びらん(量:少量もしくはおりものに混じる程度、色:赤~茶)

子宮腟部びらんは、子宮の入口付近である子宮腟部が赤くただれている状態です。ほとんどは女性ホルモンが活発な時期に多く見られる生理現象で病気ではありません。妊娠していない時でも出血しやすく、性交渉や内診の刺激で出血することもあります。細菌や刺激への抵抗力が弱いため、炎症を起こすと出血が見られることがあります。炎症が治まると、出血も止まります。

・子宮頸管ポリープ(量:少量もしくはおりものに混じる程度、色:赤~茶)

子宮頸管という子宮の入り口にできるイボのようなもので、多くの場合、良性で無症状です。多くは、卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響でできるといわれています。組織がやわらかく充血しやすいため、セックスや排便時のいきみなどの刺激でも出血します。

 

出血してしまったらどうすれば良いの?

妊娠初期に出血があったら、落ち着いて状況を確認するようにしましょう。いざという時に慌てないために出血した場合の対処法を知っておきましょう。

①出血の色、量、においを確認する

色:出血してから体外に出るまでの時間が長いほど、赤から茶色へと変化します。緊急度が高い順に真っ赤(鮮血)→ピンク→赤褐色→茶色→薄茶色となります。赤・ピンク色の血が出ている場合には、すぐに病院に連絡をしてください。

量:出血量の目安は生理の2日目で、それ以上の場合にはリスクが高いとされています。赤黒いレバーのような塊の出血の場合には、流産が心配されます。量が多い、量が増える場合はすぐに病院に連絡をしてください。

②病院に電話連絡して、出血したことを伝える

以下のポイントを的確に伝えるようにしましょう。

・出血の状態(①でチェックしたもの)

・いつから出血しているか

・おなかに痛みや張りがあるか

・37.5度以上の発熱やその他の不調があるか

③病院からの指示に従う

すぐに受診するか、自宅安静をして様子を見るのかは病院の指示に従います。胎児心拍が既に確認できている場合、しばらくして出血が止まるようであれば、自宅安静の指示が出る場合があります。病院を受診するように指示があれば、車かタクシーを利用し、安静な姿勢で移動します。公共交通機関は避けましょう。

まとめ

妊娠初期の出血はよくあることですが、自己判断はせず、必ず医師に相談するようにしましょう。生理の時より出血量が多い場合や腹痛がひどい場合は、夜間・時間外でもすぐに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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