2022年3月31日
乳児

乳児の栄養  乳汁栄養と離乳栄養

<乳児期の栄養>

出生から1歳未満を乳児期といいます。乳児期は、人間の一生のうちでもっとも発育が盛んな時期であり、体重は3カ月で出生時の約2倍、1年で出生時の約3倍になります。

身長は1年で出生時の約1.5倍になります。乳児の場合、健康の維持・増進のためだけでなく、発育に必要なエネルギーおよび栄養素を摂取しなければなりません。

そのため、1日に必要な栄養素量は体重1㎏あたりで比較すると成人よりも多くなります。

また、発育に伴い、乳児の食事は形態や内容が変わっていきます。乳児期の前半は母乳またはミルクの乳汁栄養、後半になると離乳食を中心とした離乳栄養になります。

<乳汁栄養>

乳汁栄養には母乳栄養、人工栄養、混合栄養があります。

母乳栄養とは乳児を母乳で育てることです。

これは最も自然な育児栄養法であり、乳児の発育、健康維持のために最も優れていることは昔からよく知られています。母乳には乳児に必要な栄養素の全てが適当な割合で含まれており、それらのほとんどが消化・吸収利用されて代謝負担が極めて少ないとされています。

また、免疫物質が豊富に含まれているので乳児の感染予防にも役立ちます。さらに、授乳を通してのスキンシップにより母子間に強い絆を築くことができるといわれています。これらの理由からWHOでも母乳育児を世界的に奨励しています。

母乳不足、母親の就労など、様々な理由で母乳栄養を行えない場合、育児用ミルクなど母乳以外の乳汁で乳児の栄養を行うことを人工栄養といいます。育児用ミルクは母乳成分に近づくように様々な改良が加えられて作られています。また、母乳成分に少ないビタミンKを多く含みます。

母乳栄養と人工栄養を併用する方法を混合栄養といいます。毎回の授乳時に母乳の不足分をミルクで補う方法と、授乳ごとに母乳かミルクのどちらかを与える方法があります。

育児用ミルクを与える時には母乳を与えるような気持ちで乳児をしっかり抱き、優しく声掛けしながらリラックスして授乳することでスキンシップを図ることができます。

<離乳栄養>

乳汁栄養から幼児食に移行する過程を離乳といいます。

乳児は生後5カ月頃から乳汁以外の食物にも興味を示すようになります。また、水分の多い乳汁からでは栄養が十分に摂取できなくなります。乳児は咀嚼し嚥下する練習を行い、固形物を食べる能力を獲得する必要があります。このように、離乳栄養は栄養面と生理機能面から適切な時期に実施することが大切です。

自分の手や食器を使って食べるということは乳児にとって新しい経験であり、心の成長にもつながります。

離乳栄養の開始時期は生後5~6カ月頃の機嫌が良い日の日中がよいとされています。始めは1種類のものを1さじから与え、徐々に量、種類、回数を増やしていきます。

厚生労働省の授乳・離乳の支援ガイドに進め方の目安が示されています。

 

離乳初期:生後5~6カ月頃。なめらかにすりつぶした状態。子どもの様子を見ながら1日1回1さじずつ始める。母乳や育児用ミルクは飲みたいだけ与える。

離乳中期:生後7~8カ月頃。舌でつぶせる固さ。1日2回食で食事のリズムをつけていく。いろいろな味や舌ざわりを楽しめるように食品の種類を増やしていく。

離乳後期:生後9~11カ月頃。歯ぐきでつぶせる固さ。食事リズムを大切に、1日3回食に進めていく。共食を通じて食の楽しい体験を積み重ねる。

離乳完了期:生後12~18カ月。歯ぐきで噛める固さ。1日3回の食事リズムを大切に、生活リズムを整える。手づかみ食べにより、自分で食べる楽しみを増やす。

<乳児の消化器機能>

乳児は消化吸収能力が未熟なため、乳汁や離乳食の与え方を適切にしなければなりません。

生まれてすぐの乳児には哺乳反射(反射作用としての哺乳)や吸啜反射(口に触れたものを吸う反射)が見られます。

これらの反射は生後4~5カ月で消失し、自分の意志で哺乳ができるようになり、乳汁以外の食物をとることもできるようになります。

生後7~8カ月頃には食べ物を口に取り込み、舌と上あごでつぶせるようになります。

9~11カ月頃には前歯が生え始め、かじり取りや歯茎の上でつぶすことができるようになります。

乳児の胃は縦型で容量も小さく、噴門部(胃の入り口)の括約筋の機能が未熟なため、飲んだミルクを吐き戻してしまうことがあります。授乳後にげっぷをさせるのはこの吐き戻しを防ぐためです。

摂取された乳汁や食物は、口腔内の唾液、胃の中の胃液、小腸の小腸液、膵液、胆汁など様々な消化液の影響を受けて消化されながら小腸に達します。乳児期前半では膵液の脂肪の分解酵素の働きは弱いのですが、母乳中脂肪の消化吸収は良好です。これは母乳中に脂肪消化酵素が含まれていて、乳児の体内で働くためです。

また、たんぱく質の分解酵素の働きが糖質に比べてかなり未熟であり、分泌量も少なくなっています。小腸では、消化された分解物質が腸粘膜を通過して吸収されます。十分消化されていないたんぱく質などが腸粘膜を通過して吸収されると、アレルギー反応が起こりやすくなります。特に乳児前半ではこうしたことが起こりやすいため、離乳食は5~6カ月頃から開始し、始めはアレルギー性の低い消化しやすい食品を選ぶようにしましょう。

なお、早産児の場合は修正月齢(出産予定日を基準にした月齢)の5~6カ月に開始します。

 

<まとめ>

乳児期は心身の成長・発達が最も顕著な時期といえます。乳児期の栄養は心身の成長・発達の特徴、食事の形態、摂食行動の急速な発達、消化吸収機能の未熟性を十分理解した上で進めていくようにしましょう。

 

<参考文献>

好きになる栄養学 第3版   浅見直美・塚原典子 著

 

新育児にかかわる人のための小児栄養学 改訂第2版 山口規容子 水野清子 共著

 

あわてず、ゆっくり離乳食 授乳・離乳の支援ガイド(改訂版)の要点 可野倫子

 

小児栄養学 武藤静子 編著

 

あたらしい小児栄養学 林淳三編

 

 

 

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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