「臍帯血投与は脳性麻痺に有効」と研究論文で報告されました
2025年4月発行の「Pediatrics」で、臍帯血投与が脳性麻痺の子どもに対して大きな臨床効果をもたらす
ことを強く支持する研究論文が報告されました。この論文と、脳性麻痺児に対する臍帯血治療の今後の
展望を交えた解説が、Parent’s Guide to Cord Bloodで紹介されています。
この研究は、11件の研究から得られた447名の脳性麻痺(Cerebral Palsy:CP)児のデータをもとに行われ
た、個別患者データ・メタアナリシス(Individual Participant Data Meta-Analysis:IPDMA)の成果であ
り、国際的な共同研究によって実現したものです。
研究結果
・臍帯血投与の6か月後、対照群と比較してGMFM-66の平均スコアが1.36ポイント高く、統計的にも有意な改善
(95%信頼区間: 0.41~2.32、p=0.005)。
・臍帯血投与の12か月後、投与群と対照群の間でGMFM-66スコアの平均改善差は1.42ポイントとなり、有意差を
確認(95%信頼区間: 0.31~2.52、p=0.012)。
・投与後6~12か月で改善効果がピークを迎えるという傾向は、想定されている作用機序(臍帯血の分泌因子によ
るパラクリン効果を通じて神経炎症を抑え、内因性の組織修復を促進し、それにより脳内神経回路の接続性が
向上する)と一致。
・凍結保存前の総有核細胞数(TNC:Total Nucleated Cell count)が体重1kgあたり5,000万個を超える臍帯血
で、より良好な応答の傾向あり(12か月時点でのp=0.047)。
・年齢が若い児ほどより良好な応答の傾向あり。
・CP重症度が軽度である児童(5段階評価のGMFCSレベル1~3)で、より良好な応答の傾向あり。
・重篤な有害事象の発生頻度において、治療群と対照群の間に差はなく、安全性良好。
本研究がCP児のご家族にもたらす意味
CP児のご家族にとって、この治療が我が子にも効果があるのかどうかは最重要な情報です。
本研究では、臍帯血治療を受けた子どもの68%が、6〜12か月後にGMFM-66(粗大運動機能評価)のスコアで、
対照群全体を上回る結果が示されています。また、こうした改善効果は、特に年齢が若く、治療開始時点である程
度の運動機能のある子どもにおいて、より顕著に現れる傾向があることも明らかになっています。
現在では、脳性まひ(CP)は生後6か月という早い時期に正確に診断できるため、早期に診断を受けることで、より
多くのご家族が、脳の神経可塑性(ニューロプラスティシティ)が最も高く、そして体重あたりの総有核細胞数(
TNC/kg)を高く確保しやすい時期に、治療の選択肢を得る機会を持てるようになりました。
この研究が公衆衛生政策にもたらす意義
臍帯血投与は、第3相臨床試験の実施が長年求められており、その実施には多大な労力と費用を要します。一方で
、CPに対する有効性を裏付けるエビデンスが着実に蓄積されてきているため、それに応じた以下のような公衆衛生
政策の見直しが求められています。
◆本治療の正確な情報提供と教育の推進
産科医と妊婦の両者が、臍帯血療法がCPの治療の選択肢となるという事実について知っておく必要がある。
◆フェーズ3の組織的な実施
CPに対する臍帯血療法は、非常に簡便で安全であることが確認されましたが、提供している病院やクリニックは
限られています。多国間で試験を実施できれば、患者コミュニティに有益です。
◆治療へアクセスするための規制整備
承認がまだ得られていない有望な治療法に対し、重篤な疾患の患者が治療にアクセスできる制度が設けられてい
ます。これらの制度は、「コンパッショネート・ユース(人道的使用)」、「拡大アクセス」、「病院例外」など、国によ
って様々な名称で運用されていますが、まだ制度が整備されていない国もあります。規制当局によるこのような治
療法へのアクセスの確保は、この分野における大きな課題の一つです。
この記事の英語版はペアレンツガイドにて公開されています。
引用元:ペアレンツガイド
https://parentsguidecordblood.org/en/news/cord-blood-proven-effective-cerebral-palsy
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