「妹のさい帯血が、お兄ちゃんの希望の光になりました」 きょうだい間さい帯血投与の体験談

はじめに
脳性まひは、胎内あるいは周産期に生じた脳損傷に起因する運動障害で、近年さい帯血を投与することによる運動機能や知的発達の改善の可能性が報告されています。
今回は、当社で保管したごきょうだいのさい帯血を用いて、高知大学の臨床研究へ参加された男の子のお母さまのお声をご紹介します。
基本情報
妊娠34週、出生体重1972gにて出生。
アプガースコアは1分 9点、 5分 9点。
経緯
長男が生後7ヶ月のとき、運動発達の遅れがあったため小児科を受診したところ、脳性まひと診断されました。MRIの結果から、新生児期の黄疸が原因で脳性まひになったと判明しました。
診断されてからは、リハビリ以外にもできることはないかと、様々な企業や大学を調べては連絡していました。その中で、ステムセル研究所でさい帯血保管ができることを初めて知りました。
第二子となる長女の出産時には、万が一脳性まひになった時を想定して迷わずさい帯血を保管しました。
幸い長女は健康だったため、長男のためにさい帯血を使用したいと考え、長男が6歳の時にアメリカのデューク大学へEAP(拡大アクセス制度)での投与を申し込みました。
ちょうどその頃、高知大学できょうだい間でのさい帯血投与の臨床研究が開始したとステムセル研究所からお知らせがありました。
デューク大学での投与に向けて、すでにきょうだい間でさい帯血の型が合うかの検査は済んでいたので、すぐに問い合わせをし、急遽高知大学で投与をすることになりました。
(上)高知大学医学部附属病院にて
投与以前の状況
長男は自分で歩くことはできましたがとても不安定で転びやすく、ヒッププロテクターが不可欠でした。出かける際には車椅子も使用していました。
また重い言語障害があり、家族でないと聞き取れないくらい発音が不明瞭でした。
当時はオムツを付けていて、お風呂も一人で入れないため全介助が必要でした。
投与後の変化
投与前のさい帯血の検査で、細胞生存率も良く、細菌の混入もないことが分かっていたため、高知大学で安心・安全に投与してもらうことができました。
入院中に関しては、不明点や疑問質問があった場合には担当の小児科医の先生が丁寧に時間をかけて説明をしてくれていたので、不安などなく過ごすことができました。
投与後のリハビリが1番大事とのことだったので、さい帯血投与後は毎日病院の敷地で階段の上り下りをし、外でお散歩やプレイルームで体を使った遊びをして過ごしました。
(上)入院中の様子
長男の場合は、投与から半年経った頃から変化が現れ始めました。
だんだんと歩くときの姿勢が良くなって転ばなくなり、投与から3年経過した現在では、ジャンプまでできるようになりました。車椅子の出番はほとんどなくなりました。
言語障害も改善し、学校の先生やお友達と会話を楽しめるくらい発音も良くなりました。家族ならば話している事の95%を理解できるまでになりました。
オムツも卒業でき、学校でも1人でトイレに行くことができています。今では、着替えや食事も介助無しできるようになり、付き添うことがほぼ無くなりました。
本当にたくさんのことが自分でできるようになって、本人もとても嬉しそうです。
投与の効果が見えるまで半年かかりましたが、それ以降はずっと停滞することなく、良くなり続けている実感があります。
「出来そうかも」と思えることが増えることで、本人もやる気が上がっている様子です。私としても、麻痺が改善して日常的な介助がかなり減ったことで、「もしかしたら将来1人で暮らせるかも、自立できるかも」と考えられるようになりました。
未来への道が拓け、家族全員にとっても、さい帯血を保管して本当に良かったと思っています。
(上)元気にジャンプする長男
さい帯血保管を悩まれている方へ
私自身、長男が脳性まひと診断されるまでは、病気そのものに関する知識がなく、さい帯血保管についても知りませんでした。
実際にさい帯血の投与を経験した今は、さい帯血保管を知らない方や、保管を迷ってやめてしまう方がいるのはとても勿体ないと感じています。海外に比べると保管費用は手頃ですし、出産のときにしか保管できない貴重な血液なので、ぜひ保管を考えていただきたいです。
もしお子さんが脳性まひを患っても、さい帯血が家族にとって希望の光になってくれます。
この記事は保管者様のご同意を得た上で掲載しております。
記事内容については個人の感想であり、効果を保証するものではありません。
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