2021年5月21日
陣痛・出産

陣痛は生理痛のような痛みってホント?

陣痛は生理痛のような痛み!?

陣痛は生理痛のような痛みと表現されることがあります。私自身も、陣痛の始まりを例えるならば「生理痛を10倍くらい強くした痛み」でした。陣痛と生理痛はなぜ似たような痛みなのでしょうか?今回は陣痛と生理痛の痛みのメカニズムをご説明いたします。知っていると便利な痛みの対処法についてもご紹介いたします。

 

陣痛と生理痛に関係するプロスタグランジン

排卵後に妊娠しなかった場合、不要になった子宮内膜が剥がれ落ちて出血が起こります。これが生理です。生理中は子宮内膜からプロスタグランジンというホルモンに似た働きをする生理活性物質が分泌されます。プロスタグランジンには子宮を収縮させ不要になった子宮内膜を血液とともに体外に押し出す働きがあります。このプロスタグランジンによる子宮の過度な収縮が生理痛の主な原因です。プロスタグランジンには痛みを強める作用を持つものもあるので、プロスタグランジンが頭で作られた場合、頭痛などの症状が現れることもあります。

実はこのプロスタグランジン、陣痛の際にも分泌されます。陣痛とは出産のために起こる子宮収縮の痛みです。陣痛も生理痛もプロスタグランジンの分泌により促される子宮収縮の痛みなのです。このことから、陣痛は生理痛のような痛みといわれることが多いのです。さらにプロスタグランジンには製剤になっているものもあり、出産のときに陣痛を促すための陣痛促進剤として使われています。

生理痛に似ているのは前駆陣痛

陣痛には大きく分けて3つの種類があります。産前の子宮収縮による前駆陣痛、出産の段階で起こる本陣痛、産後の子宮収縮による後陣痛です。この中で生理痛と似ているといわれているのが前駆陣痛です。

前駆陣痛は偽陣痛とも呼ばれていて痛みの感覚が不規則で長時間継続しないという特徴があります。また、強い痛みが時間の経過とともに弱くなってくる傾向があります。前駆陣痛は本格的な陣痛に向けて身体が準備を始めているというサインでもあり、基本的にはそのまま分娩に進むということはありません。

本陣痛の場合、始まりは生理痛に似た軽い不規則な痛みであっても、徐々に痛みの感覚が規則的になり、強さも増していきます。子宮収縮による痛みだけでなく、胎児が出るために子宮口が押し広げられることで生じる痛み、胎児の頭が下がってくることで骨盤が押し広げられ生じる腰の痛み、胎児の頭により産道の筋膜などが圧迫・刺激されて生じる痛み、赤ちゃんが出てくる間際の外陰部から肛門にかけて強い力で引っ張られるような激しい痛みなど様々な痛みが相まって、もはや生理痛とは比べものにならないという方が多いようです。

 

生理痛のような前駆陣痛の対処法

生理痛に似ていると表現される前駆陣痛ですが、生じる原因については、まだ完全には明らかにされていません。妊婦さんが活動的に動いた時、膀胱内に尿が溜まっている時、性交渉の後、脱水傾向にある時などに子宮収縮が誘発され、前駆陣痛が生じやすいと考えられています。生理痛のような痛みが強い時でもおなかに赤ちゃんがいる妊婦さんは鎮痛薬を使用することが出来ません。痛みを和らげるために出来る対処法をご紹介いたします。

①ゆっくり深呼吸をする

3秒くらいかけてゆっくり鼻から吸って、3秒くらいかけて口から吐く呼吸をすると痛みが和らぐことがあります。肩の力を抜き、落ち着いて長くゆっくりと呼吸しましょう。この呼吸法は本陣痛の始まりの痛みにも使えるので練習しておくと良いでしょう。

②楽な姿勢で安静に過ごす

楽な姿勢で安静に過ごすことで痛みが和らぐ場合があります。自分にとって楽な姿勢を見つけてみましょう。横向きの状態で足にクッションを挟むとおなかや腰に負担がかからず痛みが和らぎます。姿勢を変えることで痛みが和らぐ人もいるようです。

③水分摂取を心がける

脱水気味になると子宮収縮が誘発され、生理痛のような痛みが生じやすくなるといわれています。こまめに水分を摂るようにしましょう。お水やリラックス効果も期待できるノンカフェインの温かいハーブティーがお勧めです。

④体を温める

体が冷えていると、ちょっとしたことで痛みを感じやすくなります。身体を温めることで全身の血行が良くなり、痛みが和らぐことがあります。温かい飲み物で体の内部から温めたり、カイロを使って痛みのある部分を温めたりしてみましょう。

⑤気分転換をする

痛みがそれほど強くない場合には、気分転換をして痛みから気を逸らすと良いでしょう。好きな音楽・映画・本などを楽しむ、アロマテラピーでリラックスする、ストレッチや安産体操をするなど、自分に合った気分転換の方法を見つけてみてください。

不安な場合には産院に相談を!

本格的な陣痛に繋がりそうなときには産院に連絡し、相談することが必要です。生理痛のような痛みを感じたら、まずは落ち着いて、痛み、おなかの張りの状態や間隔を確認しましょう。痛みの間隔が規則的であるようなら、時間を計ってみてください。なお、生理痛のような痛みと共に出血があった時、破水した時には、すぐに産院に連絡して主治医の指示に従うようにしてください。どのようなタイミングで連絡を取るべきか、事前に相談しておくといざという時に慌てないで済むので安心です。

 

まとめ

陣痛と生理痛の痛みが似ているのは、どちらも子宮収縮による痛みだからということがわかりました。前駆陣痛の場合、生理痛と違って薬を飲むことができないので、痛みに苦しむ方も多いかと思います。今回ご紹介した痛みの対処法を参考にしてみてください。

陣痛はもうすぐ赤ちゃんに会えるサインです!皆様どうぞ良い出産をお迎えください!

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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