2022年1月30日
赤ちゃん・子育て

突発性発疹とは?

小さな赤ちゃんが、もしも急に発熱してしまったら、きっと慌ててしまいますよね。
赤ちゃんの急な発熱と聞いて、疑わしい疾患に「突発性発疹」があります。乳幼児期の代表的な疾患です。生まれて初めての発熱が、この突発性発疹であることが多いとも言われています。

いざという時にあわてないように、突発性発疹がどのような疾患なのかを見ていきましょう。

どんな症状?

突発性発疹はウイルス感染症の1つです。
主な症状は、発熱と発疹です。その典型的な例をみてみましょう。

〇1歳前後(生後4ヵ月から1歳未満が多い)の赤ちゃんが、急に高熱(38~40℃)を出す
〇発熱は3~4日程度
〇熱が下がり始めると、赤い発疹が出る
〇発熱時は比較的元気だが、解熱時に赤ちゃんの機嫌が悪くなることがある
〇季節性はない(どの季節でも発症する)

多くの場合は、高熱が3~4日ほど続いた後、平熱近くに下がり、発疹が現れます。発疹は皮膚内の毛細血管が部分的に拡張して赤く見えるものであり、かゆみはありません。
最初は小さなブツブツした赤い発疹ですが、蕁麻疹のように赤く平面的に膨らんできます。「紅色丘疹(こうしょくきゅうしん)」とも呼ばれています。

お腹や背中など胴体の部分に発生し、その後、顔や手足に広がっていきます。中には、まぶたまで腫れてしまうような場合があります。
しかし、発疹は長くても1週間以内には徐々に消えていき、痕が残ることは基本的にはありません。
ウイルスの感染症なので特効薬はなく、自然治癒します。
しかし、熱性けいれんを伴ったり、ごくまれに脳炎などの合併症が起こる可能性もあったりするため注意は必要です。

突発性発疹の診断は、発熱だけではできません。咳や鼻水のような感冒症状があまりなく、月齢や年齢といった特徴を考慮し総合的に判断されます。最終的には、解熱後の経過を観察し、発疹がでて初めて「突発性発疹」と診断されます。

また中には、不顕性感染といって、典型的な症状は出ないが感染はしており、免疫を獲得している状態になっている場合もあります。この突発性発疹は、ほとんどの乳幼児が一度は感染し、2~3歳までにほとんどの幼児が免疫を獲得します。

感染経路は?

生後6ヵ月ぐらいまでの赤ちゃんには、母親からの移行抗体(母親の胎盤を経由して赤ちゃんに移行する抗体)があるため、少量のウイルスが赤ちゃんの体内に入っても体調をくずすことはあまりありません。
しかし、移行抗体は生後4~6ヵ月でほぼ消失してしまいます。この時期から1歳前後にかかることが多いのは、ちょうど母親から体内でもらった抗体がなくなってくる時期だからと考えられています。

突発性発疹は、日本人ならばほとんどの人が持っている「ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)」、または、「ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)」に、赤ちゃんが初めて感染した際に発症します。
感染したことのある乳幼児や大人の唾液にはウイルスが潜んでおり、その唾液を感染経路として赤ちゃんに感染すると考えられています。
このウイルスに感染すると体から排除されることはありませんが、感染後は一生を通じての免疫を獲得するため、同じ型のウイルスに感染することはありません。
また、ヒトヘルペスウイルス7型の感染時期は6型よりも感染時期が遅いことが多く、まれに突発性発疹に2回かかることもあります。

どう対処したらいいの?

突発性発疹は、予後良好の病気であると言われますが、小さな赤ちゃんが高い熱を出し、しかも数日続くので、ママにとっては不安でたまらなくなるでしょう。
特に初めての赤ちゃんならば、より一層不安になることと思います。

この疾患は、高熱が出ていても意外と元気なのが特徴です。また、予後も良好なので、対症療法で経過観察することが重要です。
熱があっても機嫌がよく、ミルクを飲んでいれば様子を見ておいてください。
離乳食なども食べるようならば、普段通りにあげてみてください。
けれども、ミルクを飲む量が少ない、吐く、下痢がひどい、ぐったりして機嫌が良くない、などの様子がある時は必ず受診してください。

注意したい症状

突発性発疹を発症しても、順調に症状が経過していれば、過剰に心配することはありません。しかし、注意が必要な合併症や疾患もあります。主なものを以下に紹介します。

《熱性けいれん》

突発性発疹は急に熱が上がることが多いので、熱性けいれんにも注意が必要です。
(熱性けいれんの症状:38℃以上の高熱で、熱が出始めてから24時間以内に生じることが多い。左右非対称のけいれんや意識がなくなったり、顔色がわるくなったりする。)
ほとんどの熱性けいれんは、5分以内で自然に治まります。けがをしないよう周りの環境に注意し、吐しゃ物で窒息しないように横向きに寝かせてあげましょう。
けいれんが治まったら、落ち着いて受診しましょう。

《急性脳症》

突発性発疹の原因となるヒトヘルペスウイルス6型に感染した際、身体が病原体に対して反応を起こすことで、脳に急激なむくみが生じる病気です。国内では年間数百人が発症すると推定されており、特に乳幼児に多くなっています。
主な症状は、意識障害です。けいれんや麻痺を伴うこともあります。
上記の熱性けいれんとの区別が付きにくいこともあります。けいれんが治まらない等、何かおかしいなと思ったらすぐに受診しましょう。

《その他》

突発性発疹と同様に、「発熱」と「発疹」の特徴がある疾患もあります。
例)川崎病…発熱が持続したまま発疹が出る
このような疾患に罹患した場合は、突発性発疹とは異なり、専門的な治療が必要になります。そのため、発熱した時は、一度受診することをお勧めします。

いずれにしても落ち着いて症状を観察し、少しでも重篤な様子があればすぐに受診してください。
突発性発疹がどのようなものか、発熱への対処方法、重篤な症状とはどのようなものかを事前に知っておくことが、赤ちゃんの健康管理には重要です。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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