無痛分娩での出産とは?

日本では数年前に比べると、出産の方法において選択肢が豊かになりました。

いくつかの選択肢の中から最もふさわしい「自分らしい出産」を目指せるようになれるなら、それはとても良いことですね。

妊婦さんがどのような出産を希望するか、新しい赤ちゃんとどう出会いたいかで、出産の方法や場所は変わってきますが、ママにとって幸せなお産を選ぶためには、それぞれのメリット、デメリットをしっかりと把握する必要があります。

<無痛分娩ってどんなイメージ?>

「無痛分娩」と聞いて、皆さんはどのようなことをイメージされるでしょうか。

「海外の妊婦さんのためのもの」、「麻酔を使うお産」等、様々なイメージがあるかと思いますが、無痛分娩とは読んで字の如く、痛みを伴わない出産・分娩のことです。

現在、日本の手術では、麻酔を使用することが当たり前になっています。

しかし、出産時においては、麻酔を使うことに対して、痛みを我慢できない後ろめたさ等、「産みの苦しみを味わってこそ母性が生まれる」といった昔ながらの考え方が根強く存在し、いまだに少数派であるというのが現状のようです。

その他、胎児への麻酔の影響等、依然として不安の声もあるようです。

しかし日本政府では、人口減少に歯止めをかけるべく「産みやすい・育てやすい環境作り」を課題とし、無痛分娩の安全性についての提言を行いました。

2018年3月、厚生労働省が設置した研究班は、「無痛分娩とそれ以外の分娩のリスクに大きな違いは無い」と発表しました。

<自然分娩と無痛分娩の違いとは>

自然分娩と無痛分娩には、それぞれに良い点があり、最終的にどちらを選ぶかは、妊婦さんとそのご家族で決定することができます。

自然分娩の良い点は、産みの苦しみを感じるものの、その後の達成感が幸福や満足感、自信に繋がります。

痛みに耐え抜き、赤ちゃんのために成し遂げた満足感があります。痛みと上手に向き合い、痛みに対する準備をし、そして分娩時の痛みに耐えたという自信を味わうことができます。

一方で、無痛分娩の最大の良い点は、出産による苦痛を味わわずに穏やかに生まれてくる赤ちゃんと向き合えることです。

痛みに弱い人、出産に対しての恐怖心が強い人も無痛分娩の方が向いているといえます。痛みに弱い妊婦さんは、陣痛が始まるとパニックになることもあるからです。

さらに、出産後の疲労度も低いため、分娩後すぐにゆったりとした気持ちで赤ちゃんと2人だけの時間を過ごすことができる点もメリットです。

<無痛分娩の種類>

無痛分娩には、現在「計画無痛分娩」と「自然陣痛を待つ分娩」の2種類が主流です。

①計画無痛分娩

計画無痛分娩とは、予め分娩日を決め、計画的に行う無痛分娩のことです。良い点としては、出産予定日がおおよそ決まるため、心の準備ができます。そして家族がお産に立ち会いやすい、入院する部屋や分娩室の希望が叶いやすい、時間外分娩の可能性が低い等も良い点としてあげられます。

②自然陣痛を待つ無痛分娩

自然の陣痛を待つ無痛分娩とは、陣痛が始まったところで麻酔を開始する無痛分娩のことをいいます。

良い点としては、自然に近いタイミングで出産できることと陣痛促進剤を使わずに済む場合があるということです。

この2種類の無痛分娩には、

・妊婦さんのストレスが少ない

・痛みをコントロールできるため痛みに弱い人に向いている

・緊急帝王切開になってもスムーズに移行ができる

・体力の消耗が少ない

等の共通した良い点が備わっています。

ただし、人によっては麻酔薬の副作用を感じたり、無痛分娩の料金が別途かかったり、医療介入が増えたり等、デメリットもあります。

<無痛分娩の麻酔ってどういうもの?>

無痛分娩という選択を考えたときに、妊婦さんやそのご家族が最も心配するのは、危険性がないか?という点だと思います。

麻酔そのものが体に与える負担や、胎盤を通じてつながっている赤ちゃんに及ぶ影響、出産後の母乳に麻酔が含まれてしまうのではないか等、心配は尽きないと思います。

無痛分娩で使用する麻酔薬には、麻酔の成分が胎盤を通過しにくいもの、赤ちゃんへの影響が最小限に抑えられるもの、鎮痛効果が長時間続くもの、低濃度で痛みを遮断できるもの等を併用し、安全で速やかな分娩が可能になるように工夫されています。

麻酔薬の安全性については、海外でも多くの検証がなされ、国内でも数多くの論文が発表されています。適切に使用されれば、大きな影響もたらす心配は無いということです。

しかし、お薬ですから効果の裏に必ず副作用もあります。

可能性のあるものとしては、かゆみ、低血圧、吐き気、発熱等です。

その他デメリットや疑問、質問は先生に相談しましょう。

女性にとって、自分の赤ちゃんを妊娠するということは、大きな幸せをもたらすと同時に、1人の人間を育てるという重圧がのしかかる瞬間でもあります。

まずは、理想とするお産を考え優先順位を決めて、信頼できる産婦人科の先生や病院を選ぶと良いでしょう。

<まとめ>

新しい家族を迎える妊婦さんに、より充実した出産を体験してもらえるように、普通分娩、無痛分娩に関わらず、多くの妊婦さんとそのご家族が幸せな出産を体験できることを心から願っております。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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