リスクの高い高齢出産。予防できる?

我が子は無事に生まれてきてくれるか。障害を持って生まれてくる可能性はないだろうか。
どんな年齢の妊婦さんでも、心配になる出産に対する不安。
特に高齢出産の場合は様々なリスクがあるといわれ、その不安もひとしおです。

今回は、そんな不安が多い高齢出産のリスクについて、お話していきます。

高齢出産とは?

高齢出産は35歳以上で初めて出産する場合を指します。
最近では晩婚化が進み、35歳で高齢出産といわれても、ピンとこないかもしれません。
しかし、この35歳という年齢には根拠があり、この年齢くらいから様々なリスクの頻度が急激に上がっていくのです。

染色体異常のリスク

高齢出産のリスクとして、一番心配される方が多いのがダウン症などに代表される染色体異常のリスクです。
ダウン症に限っていえば、高齢になるほど、ダウン症の発生が高まるといわれています。

また染色体異常症には様々な種類があり、ダウン症はその1つに過ぎません。
高齢出産が増加するに伴い、出生前診断の件数も増えています。出生前診断は、妊婦健診で受けるエコー検査なども含まれますが、現在では新型出生前診断が妊娠10週から受けられるようになり、その件数は上昇しています。
この検査は母体の血液を採取するだけで検査が受けられる安全性の高いものである一方、確定的な診断が下りる検査ではありません。リスクが高いか低いかを診断するものです。また、保険適用外の検査であるため、検査費用は高額になります。
染色体異常の確定的な検査として「羊水検査」がありますが、腹部に針を刺し羊水を採取するため、流産や早産、出血や感染症等のリスクもあります。

そのため、まずは新型出生前診断を受けて、可能性が高い場合に羊水検査を受けるというケースも多いようです。羊水検査を受けるのは15〜18週の間です。

流産・早産のリスク

高齢出産では流産や早産のリスクが高くなります。
流産とは、妊娠22週までに起こるものを指し、それ以降は早産となります。
流産は妊娠全体の15%で起こるとされていますが、40歳では25〜30%まで上がります。その原因の多くは胎児側の染色体異常です。
母体が年齢を重ねるにつれ、卵子も老化していきます。そのような老化が染色体異常を引き起こしていると考えられています。

妊娠中のリスク

妊娠中のリスクとして一番大きいのは、妊娠高血圧症候群です。
妊娠高血圧症候群は、通常の妊婦さんでもなる可能性はありますが、高齢出産の場合、そのリスクは2倍になるといわれています。
高血圧と聞いても、何がそれほど影響するのか、疑問に思われる方もいるかと思いますが、高血圧症になると脳出血や痙攣のリスク、胎児の発育不全になる可能性もあります。
根本的にこの病気を治す方法はなく、お母さんや赤ちゃんにとって妊娠を続けることが良くないと考えられた時には、妊娠を終わらせること、即ち出産が一番の治療になります。
状態によっては管理入院が必要になる場合もあり、その期間は長期になることもあります。予防法としては、塩分を控えめにした食生活にすることや体重管理に気をつけることが挙げられます。しかし、すでに妊娠高血圧症候群になった場合、運動は控え、安静にすることが必要です。

また、妊娠糖尿病も注意したい病気です。
妊娠糖尿病は、妊娠してから初めて発見された糖代謝異常を指します。妊娠前から糖尿病があった場合は含まれません。お母さんが高血糖になると、おなかの中の赤ちゃんも高血糖になります。そのため、様々な合併症のリスクも高まります。この管理は食事療法を中心に行われますが、改善されない場合は赤ちゃんに影響の少ないインスリン注射によってコントロールする場合もあります。
高齢出産の場合、妊娠糖尿病になる可能性が高くなるため、日頃から食生活に対して気をつける必要があります。また、肥満傾向がある方や家族に糖尿病歴のある方は特に注意が必要です。

出産時のリスク

高齢出産の場合、難産になりやすいといわれています。
年齢と共に産道や子宮口が硬くなるためです。その影響でお産に時間がかかってしまい、母体や赤ちゃんへの負担が大きくなります。危険な状態になれば、緊急帝王切開になる可能性もあります。また産後の回復も遅いため、予め準備や心構えをしておく必要がありそうです。

まとめ

高齢出産は妊娠中から出産時、出産後についても多くのリスクを伴います。
リスクを減らすためには若いうちに出産することが必要になりますが、命が宿るタイミングは人それぞれ。この命は今だから授かった命のはずです。
正しい情報を知って、妊娠中の体調管理や産後の準備など、今できることをしていきましょう。
そして、お母さん自身が明るい気持ちで過ごすことがおなかの中の赤ちゃんに良い影響を与えます。ぜひ、おなかの中の赤ちゃんとの時間を大切に過ごしてくださいね。

 

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

出産に備える
大切な情報