2021年4月9日
分娩

無痛分娩の安全性 事故が起きるリスクについて

無痛分娩は事故のリスクが高い出産なの?

インターネット検索で「無痛分娩」と入力すると「無痛分娩 事故」「無痛分娩 リスク」「無痛分娩 危険」等のワードがヒットします。世間では無痛分娩に対してネガティブなイメージを持っている方が少なくないようです。

無痛分娩とは麻酔を用いて痛みを和らげながら行う分娩方法です。産後の回復が早いことから欧米では無痛分娩が主流となっている国もありますが、日本においては出産全体に占める無痛分娩の割合は5.3%と少ないのが現状です。しかしながら、その割合は2008年の2.6%(厚生労働省研究班)から2016年は5.3%(日本産婦人科医会)と8年で2倍に増加しており、無痛分娩という出産方法が少しずつ注目を集めてきているのも事実です。

無痛分娩は本当に事故のリスクが高い危険な出産方法なのでしょうか?今回は無痛分娩の安全性と事故が起きるリスクについて調べてみました。

 

無痛分娩の事故の実態とは

厚生労働省が平成30年に開催した「第61回社会保障審議会医療部会」の資料を見ると、無痛分娩の事故の実態がわかります。2011年から2017年までに無痛分娩を行った母児の死亡・障害の個別事案(合計7事案)が繰り返し報道されました。これにより、無痛分娩に対する危険なイメージがついてしまったようです。その後、2事案の遺族より厚生労働大臣宛てに無痛分娩に関する分析と再発防止を求める要望書が提出されたことによ

り、厚生労働科学特別研究「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究」が立ち上げられ、無痛分娩の実態把握、課題の抽出、安全性確保と向上のために必要な方策の検討、提言等が行われました。

この研究によれば、2010年から2016年の間に、妊娠中から産後1年以内に亡くなった271例の妊産婦死亡のうち、無痛分娩を行っていた妊産婦は14例でその割合は5.2%でした。この14例のうち、麻酔の事故によるものは1例で、残りの13例は無痛分娩を行っていなくても起こりうるものでした。しかし、死亡事故には至らなかったものの、無痛分娩中のヒヤリハット事例(重大な事故には至らないものの直結してもおかしくない事故の一歩手前の事例)についても調査が行われたところ、稀ではありますが、重篤な麻酔合併症が起きていたことが明らかになりました。これら研究班の提言を受けて、第61回社会保障審議会医療部会にて安全な無痛分娩を行うための対応方針が示されました。

厚生労働省は無痛分娩を考えている妊婦さんとご家族の方へ向けて、担当医と相談し、各施設の体制をよく理解した上で分娩の方法を選ぶよう注意喚起をしています。

 

安全な無痛分娩をするために妊婦さんが気をつけることとは

①事故のリスクも含め無痛分娩について正しく知る

無痛分娩では陣痛やお産に伴う激しい痛みを感じることなく分娩を行うことができ、産後の回復も早いというメリットがあります。また、妊娠高血圧症候群や合併症のある妊婦さんには体の負担を少なくするために医学的な理由で無痛分娩が積極的に行われる場合もあります。一方で、麻酔を使用しての分娩となるため、副作用が起こる可能性があります。足の感覚が鈍くなる、低血圧、尿が出しにくい、かゆみを感じる、体温が上がるなどの比較的頻度の高い副作用から局所麻酔中毒、局所麻酔薬の誤注入、硬膜外腔や脊髄くも膜下腔にできた血液の塊や膿の溜まりによる神経圧迫など重大な事故に繋がるようなリスクもあります。無痛分娩を希望する場合には事故が起こるリスクも含め、無痛分娩について正しく知っておく必要があります。

②自分の体質や病歴から無痛分娩が可能なのかを把握する

妊婦さんの体質や過去の病歴から無痛分娩ができない場合があります。例えば、血液が凝固しにくい病気や血液をサラサラにする薬を服用している場合には血液の塊による神経麻痺が生じる可能性があるため無痛分娩が難しいことがあります。

また、大量の出血や著しい脱水がある場合も血圧が急激に低下することで事故のリスクを招くため、無痛分娩が適応できないことがあります。さらに麻酔の針を刺す部分に感染巣がある場合や脊椎の病気の場合には硬膜外腔に麻酔の管が入れられないため、硬膜外麻酔による無痛分娩が難しくなることもあります。ごく稀ですが局所麻酔薬に対するアレルギー反応がある場合には深刻な状態に陥る恐れがあります。事故が起こらないようにするためにも過去に局所麻酔に対してアレルギーがあった場合には必ず主治医の先生に相談してください。

③病院側の無痛分娩の経験や受け入れ体制を確認する

無痛分娩による重篤な事故を防ぐためには、麻酔科医や産科麻酔科医といった麻酔について専門的な知識を持つ医師がお産のメンバーに入っていることが重要です。また、万が一事故が起きてしまったときに素早く対応できるような設備が整っているのかを知っておくことも大切です。無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)で無痛分娩施設の情報が公開されているので参考にしてみると良いでしょう。

まとめ

無痛分娩で大きな事故が起きる確率は稀であるということがわかりました。しかしながら、麻酔を使った出産をする以上、事故のリスクがあるということは知っておかなければなりません。100%安全なお産はありません。

安全を過信せず、無痛分娩を選択する場合には実績と経験のある医師がいる施設、緊急時の対応がきちんとしている施設を選ぶようにしましょう。

この記事の監修者

坂田陽子

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

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